第172話 ヨウコさんに起きた出来事1

 ヨウコさんが座っていた四人がけのテーブルに移動する。オペラが気をかしてドリンクの注文に行ってくれた。


たかむら君はコーヒーゼリーソフトクリーム乗せで、ボクはアイスカフェラテ。ピーは——」


「おい、お前」


「はい、ピーのホットコーヒー」


「お前、こいつの事は『篁君』と呼ぶくせに俺のことはなんでそう呼ぶ?」


「親愛の表現でッス」


「嘘つけ」


 オペラと曲垣くんのやりとりを見ていたヨウコさんがくすりと笑う。赤い唇が印象的だけど、笑顔は少し子どもっぽさが残っていた。


「で、何があったんですか?」


 僕がコーヒーゼリーの上のソフトクリームにスプーンを入れながら切り出すと、彼女は真顔になって話し始めた。





 ——私はオペラが働いていたお店でバイトしてたんですけど、ええ、今はやめちゃいました。


 うーん、理由?


 そうですね、私のお客さんが二人、突然襲われて変死しちゃって、怖くなっちゃったのが一番の理由です。


 犯人? まだ捕まってません。


 そのことが相談したいことなんですけど……。


 え? いえ、その、見ちゃったんですよね、犯人を。




 つづく

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