第170話 モデルのような女の子

 幸い地元にもあるチェーン店のカフェだったのでそれほど緊張しなかった。メニューも値段も手頃だから安心だ。


 注文カウンターを通り過ぎて窓際まで行くと、こちらに向かって手を振る人物がいた。


「えっ、女子?」


 僕らを待っていたのは意外にも女子だった。


 ストレートの長い栗色の髪。前髪ぱっつんのスタイルで色白の肌に真っ赤なリップ。加工したみたいな大きな瞳はメイクのせいか猫みたいだ。細長い手足はモデルみたいにさまになってるけど、どこか病的にも見える。


「オペラ!」


 僕の友達を呼ぶ声はハスキーで大人っぽく聞こえた。


「ヨ〜ウちゃん、久しぶり! 元気してた?」


 再会を無邪気に喜ぶオペラとは対照的に、『ヨウちゃん』はどこか不安げな表情を浮かべた。それでもオペラに会えて安心したのか、大きなため息をついた。


「久しぶり。来てくれて良かった」


「平気だよー」


「ゴメン。どうしてもなんとかしたくて……」


 彼女の話を聞きながら、その向かいにオペラが座る。僕と曲垣まがきくんは狭い通路を挟んだ隣の席に腰を下ろした。


 ようやく僕らに気がついたのか、彼女はハッとして猫の目をさらに大きくする。グレーのカラコンがより異邦人らしさを際立たせている。


「あ、ボクの友達のたかむら君とマガピー」


「やめろ」


「まあまあ。——どうも、紫堂しどうの友人の篁一志たかむらかずしです。こっちは曲垣くん」


「……」


 僕が紹介すると、曲垣くんは無言で会釈した。


「こっちは前の仕事の時、世話になったヨウちゃんでぇす」


「……篠崎陽子しのざきようこです」


 おお! ちゃんと挨拶してくれる系だ。


 彼女は落ち着いた声でさらに続けた。


「オペラに聞いています。なんでも、不思議な事件を解決してくれるお二人なんですよね?」


 は?





 つづく

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