第163話 相変わらずの僕と鬼丸です
『のう、
今日も人の言葉を話す刀・『
反対に僕は寝不足で仕方ない。
英語の授業中にぐっすり眠ってしまい、音読の順番を飛ばされても気が付かなかったくらいだ。後でクラスメイトにからかわれて気がつき、すごく恥ずかしかった。
『一志?』
「なに?」
『
「まあね」
『それだけか? 向こうへ遊びに行くとか思わぬのか?』
うちの刀『鬼丸』には時空を超える不思議な力がある。この力によって、僕は美羽と
美羽はその身体に別の人格・美紅を宿した少女で、ついこの間時を超えて想い人の
そしてもう一つの人格の美紅はその正体が鬼の姫であり、自ら
「美羽は向こうで幸せに暮らしてるさ」
そう思えば、消えてしまった美紅といた時よりも楽しく暮らしているんだろうな、と考えてしまう。
それが会いたくないとかではなくて、会わなくても元気だろうなという親心みたいな気持ちであるのは理解してもらえるだろうか?
『なんじゃ。美羽を嫁に出した父親みたいじゃの』
「せめて兄と言ってくれ!」
っていうか、美羽の兄というとあのにーちゃんになるから遠慮しとこう。
『やっと喋りよったな』
『鬼丸』がニヤッと笑う。
どうやら僕は彼に心配されていたらしい。彼なりに僕をかまって元気づけようとしているのだ。
とはいえからかわれているには違いない。
「僕だって忙しいの!」
春が来れば高校三年生だ。クラスメイトはすでに進学を視野に入れて受験に向けて本腰を入れている。
僕みたいなのんびりした奴はごく少数だ。
と、自分を客観的に見つつ、焦ったりする。
「あー、進路か。どうしようかな」
とりあえず
大学進学は何より母さんがきっちり資産管理しているから出来ることなんだけど、僕の成績でどこかの大学に入ったとしてもそれがベストであるかどうかはわからない。
母さんに無駄金を使わせるのはちょっと気が引ける……。
とか考えちゃうと、特に目標のない僕はどんどん落ち込んでいくわけで。
つづく
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