第160話 オペラとの再会


 ぐるぐるに飲み込まれた僕と曲垣まがきくんはいつ終わるともしれない眩暈めまいと浮遊感をこらえているうちに、不意にどこかへ放り出された。


「うわ!」


「む……!」


 どさっと落ちたのは、幸いにして僕の部屋の僕のベッドの上だった。


 が、僕の上から曲垣くんが続いて降って来る。


 危ない!


 咄嗟とっさにベッドから転がり落ちると、僕がいた場所に曲垣くんが落ちた。


「ふう、今回はよけたぞ」


 ほっとして顔を上げると、目をまん丸くした紫堂しどうオペラがこちらを見ていた。相変わらずピンクの派手な髪の毛をゆらしてる。


「紫堂……久しぶり……」


「ええっ? なに? 久しぶりってなにさ」


「いや、久しぶりだろ?」


「それよりも今一瞬、三人とも消えてたでしょー! なんなの?」


 消えてた?


 それも一瞬って……。


「そうか、俺たちが鎌倉時代に行っていたのは、この派手頭はであたまにとっては一瞬だったのか」


 曲垣くんが起き上がりながらボソッと呟く。


「紫堂、ほんと? 僕達ちょっと消えてただけ?」


「う、うん。青い光が光ったと思ったらみんなが消えてて、驚いているうちにまた君らが降って来たんだ! 空中から!」


 オペラは矢継ぎ早に説明すると、ハッとしたように言葉を紡いだ。


「君ら二人だけ……? 美羽みうっちは?」


 美羽っち?


 いつの間にそんな呼び方をしてたんだ。


 呼び方と言えば……。


「曲垣くん、美羽のことをちゃんと名前で呼んでくれたね」


 僕は聞き逃さなかったぞ。お別れの時に曲垣くんが「美羽さん」って呼んだのを、僕はちゃあんと聞いていたのだ。


 ニヤニヤしながら曲垣くんを見ると、彼はベッドの上に胡座あぐらをかいてこちらを睨んでいた。


「うるさい」


 ひええ、怖いイイイイ!






 つづく

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