第158話 『鬼丸』のヒミツ
それから、僕と
意外な事に
藤十郎さんの屋敷で飲めや歌えの大騒ぎ。
屋敷の外では大きな
「まるで正月じゃな」
藤十郎さんが白い
このじいさんともお別れだな、と思うと寂しさがつのってくる。クソジジイって思ったこともあったけど、命を削って刀を打つ姿に僕は感動したし、僕を慰めてくれたことにも感謝している。
「藤十郎さん、元気でね」
「なんじゃい、お前のほうこそ細っこくてすぐ風邪をひきそうなツラをしおってからに。お前こそ身体に気をつけい」
くそ、一言多いし。
藤十郎さんは雪の庭を走る子どもたちを眺めながら盃を口に運ぶ。
「わしは命の尽きるまで
「うん、楽しみにしてます」
「
「そういえば、藤十郎さんは
「わしか? わしは作らんわい。しかし其角なら全部作ってしまいよるかもな!」
そうか、もしかしたら『鬼丸』はその全てが其角さんの手によるものなのかもしれないな。
「坊主は何をやるか決めたのか?」
「えっ? いやあ、まだ何も……でも
「何をいうとるか、十七といえば立派な大人じゃ! のう、
突然名前を呼ばれてびっくりした。
藤十郎さんの顔を見ればニヤニヤと笑っている。
その顔を見て——。
「あっ」
「なんじゃい?」
「……なんでもないです」
藤十郎さんの話し方が誰かに似ていると思っていたが、やっとわかった。
『鬼丸』だ。
其角さんは『鬼丸』の話ぶりを知らないから、あの『鬼丸』の性格や話し方は其角さんが藤十郎さんを写し取ったに違いない。
意図せずに生まれたとしても、きっと藤十郎さんのことを考えながら作ったんだ。
「あは、あははは!」
「なんじゃい? 何を笑うとる?」
「こんなステキなことって、ないなと思って!」
一人で笑う僕を、藤十郎さんは不思議そうに眺めていた。
つづく
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