第153話 曲垣くんの無関心と美羽の心配


 僕らが木刀を振って稽古している間に——つまり建部正家たてべまさいえが乱入して来た事件以来、早くも三日が過ぎていた。


 あいかわらず僕の手元にある黒鞘の刀・『鬼丸』はうんともすんとも言わず、時を超える気配がない。


「ま、いざとなれば其角きかくさんが居るからいいんだけど」


 其角さんに頼めば、いつでも元の時代に送ってくれるんだけど、なんかまだその時じゃない気がする。


 というのも、曲垣まがきくんが『鬼丸』を抜いて飛んだのだから、曲垣くんに関する何かのためにここへ来たはずなんだ。


 ついでに言えば美羽みうの様子も変だ。


 あれ以来持ち前の明るさがなりを潜めて、いつも何かを考えている。それでいて時折目が合うと、すすっと視線を外されてしまう。


 何か僕に言いたいことでもあるのだろうか?


「どう思う? 曲垣くん」


「なにが?」


「美羽の事」


「?」


「元気ないなって、思って」


 曲垣くんは少し首を捻って「そうか?」と答える。どうやら曲垣くんは興味のない物はよく見ない傾向があるようだ。


 そこへ僕らを呼ぶ声がした。


「おおーい、曲垣殿ー!」


 其角さんだ。


 何か長い物を抱えてやって来る。もしかしたらあれは——。


 小走りにやって来た其角さんは、布に包まれたそれをそっと地面に置いた。僕らの目の前でゆっくりと包みを開くと——。


「あ!」


 包みの中から現れたのは、鈍く光る一振りの刀だった。





 つづく

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