第101話 異界からの帰還
ふと気がつくと、目の前に
「わ!」
「驚かせてごめんなさいね。あなた達、突然喋らなくなって……」
心配したのよ、とおばあちゃんは安心したように笑った。
横を見ると、
「五分くらいかしら……年寄りをおどかさないでちょうだいね」
話し終えると、曲垣君のおばあちゃんはすっかりぬるくなったお茶を口にした。
それをきっかけに、
「新しいお茶を入れて来るわね」
そう言っておばあちゃんは席を外す。
僕たち三人は顔を見合わす。美紅が状況を分析するように言った。
「どうやら『
曲垣君もいつもの無表情ながら眉を寄せて、「今のはなんだ?」と茫然として呟く。
確かに不思議だ。
僕と美紅はある意味鬼の関係者だから巻き込まれるのはわかる。けど、曲垣君までなぜ一緒に過去を見て来たんだろう。
曲垣君は片手を顔に当てて、今見たものが信じられないと言った。
「俺にとってはひいばあちゃんとひいばあちゃんの姉にあたる人の話だった……」
遠い親戚があんな死に方してたら驚くだろう。僕は随分と踏み込んだ話を勝手に見た事に申し訳なさを感じてうつむいた。
本当なら知られたくない事だったのではないか。
そこへ曲垣君のおばあちゃんが戻って来る。温かいお茶と豆大福を持って来てくれた。
それを受け取りながら、曲垣君が口を開いた。
「ばあちゃん、よくここに住んでいるな」
「あら? 急にどうしたの?……え、この手帳の内容を知ったの……いつの間に……」
そういえばおばあちゃんの『御母堂』のうちだと言っていた。という事は……。
「えっ! ここが事件現場!?」
急に血塗れの女の人と首の取れかけた男の人の幻影が浮かんできて鳥肌が立つ。思わず隣にいた美紅に寄り添うと、ベシッと背中を叩かれた。
「痛ッ!」
「何を怖がっている。
「だってぇ〜。お化け出そうじゃん」
「出ねぇよ!」
今度は曲垣君に怒られる。
「ごめん……」
「ほほほ。大丈夫よ。
「ええー!?」
僕は、夜に一人で稽古しないことを心に誓った。
つづく
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