第76話 忘れがちですが彼女も強い

 マジで心配してしまう。


 それが通じたのか、あまり親しすぎない関係だからか、オペラは少しずつ話し始めた。


「歌舞伎町にいるんだよ」


「かっ、かっ、カブキチョー!?」


「そ、あの有名な歌舞伎町。そこでキャッチのバイトしながら共同生活してる」


 ひええ。


 予想を超えていた。


 ううっ、紫堂しどうオペラ、君はなんて過酷な道を……。


「ちょっと待て。それじゃあさっき美羽みうに声をかけてたのは……?」


 僕がふと思い当たって口にすると、オペラはぎくりと肩を上げた。そしておもむろに両手を合わせて謝り始めた。


「ごめん、ごめん。君のツレって知らなくてさー。練習がてらに声かけただけだってば」


「お前、美羽をスカウトする気だったのかよ!?」


「違う違う! ボクがやってるのはお店に誘う方——って、そうじゃなくてホントに声をかける練習のつもりだったんだよー」


「美羽はこっちに来てから日が浅いからまだ知らないことも多いんだぞ!」


 マジで騙されて連れてかれてたらと思うとゾッとする。美羽がかわいそうなオペラの身の上に同情してついて行ってたら……いや、そういえば美羽も強いんだった。


「ごめんて」


「いや、お前に怪我が無くて何よりだった」


「?」


 僕はオペラの肩をポンと叩いた。





 つづく

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