第74話 顔見知り程度の奴との再会ってなに?

「今、何してんの?」


 近くの公園に場所を移して、久々に会ったクラスメイトに僕は尋ねた。


「んー、まあまあね」


 何がまあまあなのか。


 と、普通の人は思うだろうけど、この答えにも訳がある。


 彼は名前も珍しいが、髪の色も珍しい。もちろん地毛の美羽みうとは違って染めているピンク髪なので、学校では問題になった。


 それに長めの髪。


 小柄だから後ろから見たら女子に見える。私服で後ろから声をかけられるのはしょっちゅうだ。


 半分わかっててそんな格好しているのもよくない。からかわれたと思ったナンパ野郎たちとトラブルになることもあって、学校では問題児。


 そして何度か注意を受けた後、家庭の事情とやらもあって、ふっつり学校に来なくなった。


 そんないきさつを知ってるから、へらへらとした答えが返ってきても「ま、そんなもんか」って感じだ。


 ただ、僕も彼がなんでそんな格好を選んでいるのかまでは知らない。


たかむら君、これ飲む?」


 オペラはダブダブのジャージのポケットから350ml缶のジュースを取り出して僕に差し出した。


「ん?」


 これって——。


「チュッチュチュ、チューハイじゃん!?」


 カラフルなパッケージの脇に『これはお酒です』と書いてある。


 驚いて彼を見返すと、へらっと笑って、


「なんだ、君も飲めないクチかぁ」


 と手持ちの缶チューハイに口をつけた。


 驚いたけど、バカにされてる気もして僕は平気なふりをする。


「べべべ、別にぃ。ジュースみたいなもんだろう?」


「ダメですよ! 子どもは飲んじゃいけないんでしょ?」


 美羽がほおを膨らませながら僕らを睨んでくる。


 良かった。止めてくれる人がいた。


 オペラも残念そうな顔をしながらも、とりあえず缶をベンチに置いた。そしてニヤニヤと笑って、美羽を指差した。


「なに? 彼女?」





 つづく

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