第73話 僕の周りに派手な子が集まってくる気がする

 美紅みくの髪の色って金髪に見えるから人目につく。目の色も黄金色で、外国人みたいに思われることが多いけど、日本語は上手なので相手はたいがいびっくりする。


 もっと派手なのが大人しそうな美羽みうだ。


 浅葱あさぎ色の髪に青い瞳。


 どう見てもカラフルなウィッグにブルーのカラコン入れてコスプレしてるようにしか見えない。


 それに可愛いので僕が目を離すと、いつの間にか見知らぬ男に声をかけられてしまうから、僕は頼りないながらも騎士役をかって出ている。


 自己満足とか言うなよ。


 そりゃあ美羽は強いから、変な奴が寄って来ても美羽は雷撃を喰らわして撃退する。


 残念ながら騎士の出る幕はない。




 その日は稽古の日で、夕焼けの中僕は一人帰路についていた。僕は肩に長いバックを担いでいる。中には木刀と模造刀が入っているのだ。


 町を見下ろす眺めの良い坂に差し掛かると、坂の上から聞き覚えのある声が聞こえて来た。


「えー? こうこうせいはお酒飲んじゃダメなんですよー」


 美羽だ。


 言葉の内容からして穏やかじゃない!


 僕は荷物を持ったまま坂道をダッシュした。


「美羽!?」


「あ、一志かずし


 美羽は僕と美紅が買ってきた私服を着ていた。ただ髪の色が珍しすぎるので私服でも浮いている。


 と、思ったら美羽に話しかけている人物が美羽に負けず劣らず派手な髪色だったのでなんか二人の周りだけ異次元だった。


「やぁ! たかむら君!」


 ド派手ピンク髪の人物に名前を呼ばれて僕はのけぞる。もう少しで驚きのあまりに坂を転げ落ちるところだった。


「……ん、と……もしかして」


 ピンク髪は長髪癖っ毛だったので初めは女性かとも思ったが、間違いない。


 男だ。


 黒いジャージをだらしなく着て、八重歯をのぞかせながらニヤニヤと笑うそいつは、つい最近まで同級生だった奴だ。


紫堂しどうオペラ」


「そうだよん」


 彼はダブダブの袖口から指先だけ見せてピースすると、まつ毛バシバシの瞳でウインクを決めてくる。


「相変わらず派手だなぁ」


「そう言ってくれるのは君くらいだよ」


 紫堂オペラは機嫌良さそうに笑った。





 つづく

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