第68話 結局、彼女の思う通りさ

「ほほう。親戚の方が見学したいとなぁ」


 錬成会の会長・林崎はやしざき先生はつるりとした頭を撫でながら、僕の隣ですまして正座している美紅みくに目をやった。


「親戚にしては似とらんが」


「いえ、ほんと遠い遠い親戚で外国人の血が入っているとか」


 美紅はプラチナブロンドに近い亜麻色の髪をツインテールにした、瞳の色が金色の背の高い女子だ。それに今日はトレードマークの赤いミニスカ着物を着ている。


 多分、先生には日本かぶれの外国人にしか見えないだろう。


「ま、若い方に見てもらえるのは嬉しいことだ。ミクさん、どうぞごゆっくり」


「かたじけない」


 美紅は堂々たるお辞儀をした。確かにこういう所作しょさは美紅の方が綺麗に決まっている。


 先生は目を丸くした。




 美紅と美羽みうは僕の親戚ということになっている。そんなに出歩く二人ではないが、やはり僕と連れ立って歩いた時にクラスメイトの目に止まったりしたから、少し話題になった。


 ——たかむらがモデルを連れて歩いていた。


 ——モデル? 背の低い変わった色の髪の可愛い女の子じゃなくて?


 ——え? 別の子?


 ——おい、一志かずし。あれは誰なんだ?


 と、喧々囂々けんけんごうごうだったのだが、誰一人として『彼女か?』と聞いてくれなかったのはなんでだ?




 つづく

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