第67話 え?その約束は君とじゃないんですけど

が終わったな、一志かずし!」


 期末テスト最終日、家に帰ると美紅みくが笑顔で迎えてくれた。


「終わった……」


 いろいろと終わったな。


 ま、次のテストがあるさ。


 と、自分を励ましてみる。しかしなんだか今日の美紅みくは機嫌がいい。僕のテストが終わったことと何か関係があるのだろうか。


 珍しくにこやかに笑みを浮かべると、美紅は口の端から牙をのぞかせながら、僕の腕をとった。


「さ、『道場』へ行くぞ!」


「え?」


「てすとが終わったら連れて行ってくれると言ったではないか」


 それは美羽みうとの約束だ。


「何を言う、美羽と我は常に記憶のやりとりをしておる。美羽が我に報告したということは、我が行っても同じことだ」


「いやいやいや、違うから」


「違うというなら今から我と約束せよ」


「ヤダヤダヤダ」


「おのれ、嫌だと申すか?」


 シャキン、と美紅の爪が飛び出して僕に向けられる。反射的に僕は逃げ出した。


「暴力反対!」


「待てい!!」


 美紅の怒号が飛んで来た。





 つづく

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