第61話 家庭の禁止令は破る為にあるのではないかと



 美羽みうに蔵の上部の窓——明かり取り用の窓で、今は外扉が固く閉められている——を見て来てもらう。


 美羽は音も無く舞い上がると、しばらくの間外扉を確認すると、再びふわりと舞い降りる。


「内側から掛け金がかけてあるみたい。土壁と同じで分厚い造りの扉ね」


「でも開き方は外開きだったはずだ。無理矢理引っ張って開けられる?」


 こくりと頷くと美羽はまた宙へ浮かび始める——その時。


 何かが勢いよく飛んで来て僕の顔面に当たった。


「——!!」


 驚きと痛さで声が出ない。


 衝撃を受けた鼻を抑える僕の耳に、聞き覚えのあるしわがれた声が飛び込んで来る。


『おお! ようやく迎えに来たか。待ちくたびれたわい』


「……この……!」


 蔵の壁をすり抜けて飛び出して来たのは、黒鞘の日本刀『鬼丸』だった。



 つづく

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