第60話 鬼丸禁止令



 母さんはそう告げた後、『鬼丸』を蔵にしまって、扉に鍵をかけた。ゴツい昔ながらの錠前だった。


のどかには言わないようにね」


「なんで?」


のどかにはおそらくこの力は在りません。母さんはあなたにもこの力は無いと思っていたのよ」


 とすると、母さんは美羽みう美紅みくを連れて来た僕に内心驚いていたわけか。


 もっと驚けよ。


 というか、もっと僕にいろいろ尋ねてもいいんじゃないか?


 そういう意味では母さんは鷹揚おうようというか泰然たいぜんとしているというか……興味ないというか、どこかズレていると思う。


「さあ、母家おもやに戻りましょう」


 そう言って母さんは僕を蔵の前から追い立てた。






「と、いうわけで美羽に来てもらった」


 なにが「というわけ」かと言うと、蔵の中から『鬼丸』を取り出す為に、いろいろな能力を持つ美羽に頼もうと画策したのだ。


 美羽はどこで覚えたのか、ビシッと敬礼をかまして来る。


「とは言え……どうしたものかな」


「鍵がかかっているんでしょう?」


「そうなんだよ。美羽は鍵開けの能力なんてないよね?」


「無いけど、扉を破壊する事はできるよ」


 ダメ!

 バレちゃうから!!


「母さんに気付かれないようにするのが最優先だってば。——瞬間移動テレポーテーションはどうだろう?」


「てれぽ?」


其角きかくさんが僕を連れたまま消えながら移動しただろ。ああいうやつ」


「あれは其角かれの能力。空間を移動するのは特別なの。私にできるのはそらとかの何も無い場所での高速移動かな」


 なるほど。

 遮蔽物が無ければ、瞬間移動に近い事は出来るのか。


 あとは雷撃か。


 美紅なら『蒼牙』とかもあるけど。


「つまり、物理的にやるしか無いか」






 つづく

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