第45話 鬼姫の平穏=和菓子


「どうした、一志かずし? もっと食べるが良い」


美紅みくってお菓子好きだよな」


 それも市販のもの——スナック菓子とかジュースとかそういうものは食べない。


 母さんの手作りの物が好きなのだ。


「うむ。あの島ではこう言う物に縁がなくてな。其方そなた母君ははぎみの作る菓子はひっじょ〜〜に美味うまい」


 あの『島』を持ち出されると弱い。素朴な、何も無い集落だったからな。


「ここの平穏は何物にも変え難い。我は此処ここが好きだ」


『好きだ』と言われてどきりとする。別に僕のことじゃないのに。


「あっ、そうなんだ……良かったらもっと居たら」


「そうか! 続けて世話になるぞ、一志」


 僕の馬鹿!


 美紅をなんとかしなけりゃ、のどか姉ちゃんが僕に八つ当たりをして来るのに!




 つづく

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