第46話 僕のうちは日本家屋、かなり古いぜ

 僕の家は町でも珍しい古いお屋敷だ。日本家屋の作りで、薄暗く落ち着くが、その一方で洋風の部屋に子供の頃から憧れがあったのは否定できない。


 だから僕や姉ちゃんの部屋は和室に無理やりベッドと勉強机を持ち込んだ形になっている。部屋数だけはあるから、幸い美紅みく一人(?)増えたところで困ることはない。


 土壁つちかべを巡らせた古い木造きづくりの門をくぐると、飛石とびいしが玄関までを案内する小径こみちがある。その周りを四季折々に美しい樹々が彩り、桜、橘、紅葉もみじは当たり前で季節ごとの花々も全て母さんが手入れしている。


 この広い庭を愛でるように座敷が造られていて全て開け放つと四十畳にもなる。一番奥は床の間になっているがあくまでも来客用でここには家族は誰も使ってない。


 縁側えんがわの廊下をずっと進んでいくと奥座敷があって、そこが僕らの居住空間だ。


 美紅みくはこの広い座敷から始終しじゅう庭を眺めている。今は夏の終わりでまだ、青々とした紅葉が葉を揺らしていた。


「飽きない?」


「……飽きはせぬが? 其方そなたの許し無く外に出ぬ約束だ。これでも外を見てみたくはある」


 この家に来た当初はすぐに町へ出て見たいと美紅は言い張ったが、予備知識なく連れて出るのは怖すぎて、彼女は今、現代社会の勉強中である。


 初めは例のごとく爪を剥き出して雷撃をまとい、僕を脅しにかかったのだが——。




 つづく

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