第39話 灼熱の衝撃と共に逝くが良い
瞬間、昔自分の
だからこそ。
——だめだ、
いかほどの力が必要であったか——?
美羽もまたほんのひと時、瞬きするよりも短い刹那に兄の視線を受け止めた。
轟音。
土埃と血と、そして焦げたような匂いが立ち上る。衝撃で弾き飛ばされた美羽は『
離れていた
「兄上っ!」
霧が晴れるように土埃がおさまる中、美羽は血と肉の塊となった雪牙丸を見つけた。
がくりと膝をつくと、美羽はそのあり様にただただ、ぽろぽろと大きな涙の粒をこぼした。
零れ落ちた涙は兄であった者の身体に降り掛かり、追悼の花と散る。
『自ら——逝ったか』
どこか遠くから聞こえるような低い
その彼に背を向けたまま、美羽は懇願した。
「どうぞ、私をその刀で斬って下さいませ」
『斬る理由がない』
「私の身体に埋め込まれた
か細い美羽の声に、其角が強く反論する。
「それは違う!
「其角様……」
長い間支え合って来た其角の言葉に、美羽はようやく振り返った。
濡れた大きな瞳は『一志』と其角を写している。
やがて『一志』に向き直ると、美羽はぺこりと頭を下げた。
顔を上げれば大人びた表情の彼がこちらを見ていた。
突然現れた少年。
其角を奮い立たせ、美羽に希望をもたらした少年は——。
きょとんとして美羽を見つめ返している。そして驚いたように声を上げた。
「あ……、あっ、僕戻ってる……?」
つづく
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