第38話 今こそ償いの時

 いつもいつも……。






「な……ぜ……?」


 何故なぜ、兄の邪魔をする?


 それでも雪牙丸せつがまる美羽みうに向かって振り下ろす拳を持たぬ。立ちはだかる美羽に向かって急降下しながら叫んだ。


退け!」


 久しく聞いていなかったまともな兄の声。


 今を逃しては、きっと二度と私達は罪をつぐなえない。


 美羽はただ立ちはだかるだけではなく、空から落ちてくる兄を受け止めるかのように両手を開く。


 美羽の意図を、雪牙丸は瞬時に理解した。


 ——妹は死ぬ気なのだ。


 雪牙丸の一撃を受けて、彼の動きを止め、背後にひかえる『一志かずし』に自分もろとも斬って捨てさせる——。


 ——だめだ、美羽。お前だけは。





 つづく

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