第30話 雪牙丸1
父は
幼い頃仲良く遊んだ従兄弟は阿波・屋島へ渡るのだと聞いた。
自分達もそうであるはずだった。
しかし野蛮な坂東武者共に追われ、内海の嵐に遭い、この島に流れ着いた。
彼らは死にかけた落人達を憐れみ、結界を解いてこの島へ招き入れたのである。
鬼は強大で美しく慈悲の心を持ち、雪牙丸にとって、彼らは
初めのうちは。
生まれながらにして不可思議な能力を持つ彼らを、雪牙丸は
——
結界の外では、すでにかの名高い壇ノ浦の戦いは終わっていた。島に
雪牙丸は
「あの者らの技は、何故、雪牙丸には使えぬのでございましょう」
母は
「我らは人である故です。人には人の、
雪牙丸は優しげに赤子のいる腹を撫でる母を見て、
父は戦に出てそれ以来会っていない。この島へ辿り着いた一族の中で、雪牙丸は子どもながらに最も身分の高い貴人であった。その為に余計に直接的な力が欲しかった。
つまりここに生き残った平氏の頭領足らんと考えたわけだ。
——我らにあの力が有れば、源氏など恐れはせぬ。
全て元通りだ。
にわかに雪牙丸の瞳は明るく輝き、それが最善であるかに思えて来た。
哀れなり雪牙丸。
既にこの世に居られぬ帝を救う為に、彼は鬼の力を欲したのだった。
つづく
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