第20話 結界のツノを使って


一志かずし、この結界は外からは島を隠し、内側からは島を出る事をはばむ。そういう結界だ」


「うん、そこはなんとなく理解してます」


「この二つのツノに、今と同じ結界を張るじゅを込めて地中に埋める」


「あの、雪牙丸せつがまるが掘り出しちゃう可能性は?」


「ふむ、無いとは言い切れぬが、恐らく大丈夫であろう」


 其角さんが考えるには、雪牙丸はすでに人格を失っているのでは無いかと思っているらしかった。


「彼は『結界』が私の能力である事を知っている。よもやもう一組の角が埋められているとは思うまい。それに——」


 と其角さんは笑った。


「埋めるのは地底深くに埋める。私の空間を操る力でそこまで飛ばす」


 きっと瞬間移動みたいなものだろう。確かにこの山一つを掘り崩さなければ、見つかりっこない。


 洞窟から出た僕らは、雪牙丸に見つからないようあたりに注意しながら進み、島内で一番高い場所——中央の小高い山の山頂に出た。


 其角さんは僕と美羽みうとで交代に背負せおいながら連れてきた。身体の半分がない其角さんはひどく軽かった。


「……」


 やや緊張した面持ちで、其角さんは残っている片手の手のひらを上に向けて広げた。そこには二本の角がのっている。


「ふ」


 其角さんが軽く力を込めたように見えた。じんわりと手のひらの上の角が光を増して行く。


 金と虹色とを混ぜ合わせた輝きが宿り、ゆっくりと宙に浮いてくるくると回り始めた。


「うわ……綺麗だ……」


 僕がその美しさに見惚みとれてつぶやいた時、後頭部にぞわりとした悪寒が走った。


 ——ヤバい! アイツだ!


 振り返ると遠い中空に黒い点のように浮かぶ何者かの姿が見てとれた。


 雪牙丸に違いない。こんな遠くから圧を感じるなんて……。


 それは其角さんも美羽も感じたらしく、サッと二人の表情がこわばる。


「美羽!!」


 其角さんが叫ぶと、美羽は目にも止まらぬ速さで飛び上がった。真っ直ぐに   

 雪牙丸に向かって飛んで行く。と、同時に、其角さんは角を乗せた手のひらを下に向け、二個の角を地面叩きつける動作をとる。ブワッと風が巻き起こり、僕らの髪や着ているものの裾をはためかせた。


 ——?


 僕の目には光を放つ二個の角を地面に叩き付けたように写ったのだが、地面には角は落ちて無かった。


「この山の地下深くへ飛ばした」


「あっ、そうか!」


 其角さんの能力の一つ、空間を操る力だ。瞬間移動させたのだ。これで、雪牙丸には『結界の角』は見つからないだろう。


 だが——。


 ドォン!!


 突然、上空で大きな爆発が起こった。





 つづく

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