第11話 最後の鬼ってことは


「ちょっと待って、じゃあ君は人間——」


 驚く僕に向かって、美羽みうは再び頷いた。


「私の中に美紅みくがいる理由はわからない。けれど私達がふるう力は鬼のもの。他人から奪った能力ちからなの」


 美羽は人間。では其角きかくって人は?


「其角様は最後の鬼」


 て、ことはこの島は人間の手に落ちたのか。


「……少し、違うの」


 またもや美羽は悲しげな顔をした。





「少し違う」とはどういうことなのか。美羽はそのまま口を閉ざしてしまったし、僕もなんだか根掘り葉掘り聞く雰囲気では無くなったので、しばらく無言の時が続いた。


 黙ったまま美羽の後をついて行くと、鬱蒼うっそうと繁る樹々やつたに隠されて教えてもらわなければわからないほど巧みに隠された洞穴に着く。


 美羽は僕に中に入るよう、促した。




 乾いた洞穴は不快な感じはしなかった。


 薄暗いが入り口に陽の光が入って来るからだろう。もしかしたら、奥にも出入り口があって、風か吹き抜けているのかも知れなかった。


 美羽は薄暗いその洞穴の奥へ声をかけた。


「其角様、お客さまが来たよ」


「……」


 空気が揺らいで、何かがいる気配が伝わってくる。薄暗い洞穴の奥に、白っぽい何かが見えた。


「……客……?」


 その白っぽい何かは苦し気な声を絞り出す。ようやく僕の目にも白い影が着物のような物を身につけた、青白い顔の青年だとわかる。


 美紅の亜麻色の髪よりももっと色素の薄い金髪に近い長髪に、鋭い目付きを持った整った顔。青白いのは体調が良くない為にそう見えるように感じた。


 おもむろに美羽が手のひらを上に向けると、そこにぼんやりと光が生まれた。暗いので光源を作ったらしい。その光から再び青年に目をやると——。


「あっ——」





 つづく

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