第4話 早く家に帰りたい

 僕は刀をたずさえて元来た道を引き返した。道というほど道にはなっていなくて、ほぼ山の中だ。それでも元の場所にいた方が、帰還できる可能性がありそうで、僕は急いで自分の足跡を辿る——。


 しかしそんな器用な事は出来なかった。


「迷った……」


 こんな山の中でどこにいるのかわからなくなり、恐怖で血の気のひいた顔の僕に向かって、『鬼丸』はあきれ声をあげた。


『全く、何という阿呆じゃろうか。わしがいうた事を良く聞け。時と場所を超えたのじゃ。じゃからどこの場所にいても、戻る時は元の場所、元の時間に戻れるぞい』


「は、早く言えよ!」


 こんな時だからだろうか、一人きりで森の中にいるよりも、得体の知れない刀が話をしてくれるだけで涙が出そうになる。


 しかしそのほっとした気持ちも一瞬であった。手の中の刀がぶるっと震えたのだ。


『奴が来よる!』


「だから、奴って誰さ⁈」





 僕がそう叫んだ時、轟音と共に何かが降ってきた。それこそ雷が落ちたかと思うほどの音と衝撃。


 僕は刀を抱えたまま、後ろに吹っ飛ばされ、そのまま木にぶつかって尻餅をつく。


「!!」


 もうもうと立ち込める白い蒸気と土埃の真ん中に、幾つもの青い電撃みたいなものがパリパリッと音を立てて明るく光ると消える。


 何かの表面を走る小さな稲光はやがて一つもなくなり、白い靄も少しずつ消え始めた。


 その中心に立っていたのは——。





 つづく

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