第53話 時間勝負。

上野 桜子は宣言通り15分で戻ってきた飯能 翠の持ってきた写真、それはエグスとフィーデンのモノクロ写真で持ち込んでいたフィルムカメラで撮ったものを現像していたもので、飯能 翠に渡されると戦場 闘一郎が「上野さん、済まないが2枚は描いてくれ!岩山さん!コピー機!」と声を張る。岩山 巌は事務室から顔だけ出すと「持って行く!待ってろ!」と言う。


そのまま戦場 闘一郎が「翠!パソコン!」と言うと別の部屋からノートPCを持ち出した飯能 翠は「今起動しているが…何だこれ、OSが新しいバージョンになってる!?」と言って困惑をしていた。


いい加減置いていかれている事が耐えられない檜原 修が「なあ、いい加減何があったか…」と戦場 闘一郎に聞こうとするのだが「無理だ!時間勝負すぎる」と言いながら周りを見て千代田 晴輝と目が合うと「…千代田に聞いてくれ!」と言った後で千代田 晴輝の横に居た三ノ輪 彦一郎に「そうだ!三ノ輪先生はカメラが扱えましたよね!岩山さん!」と言って岩山 巌を探す。


岩山 巌は「ああ、広報のやつも連れてきた。ジャンジャン撮ってくれ。おもちゃ問屋も呼んだ!間に合えば良いんだが…」と言ってデジタルカメラを三ノ輪 彦一郎に渡す。


そんな慌てる戦場達を尻目に益々置いて行かれている感じの玉ノ井 勇太達は未だに右手を吊り下げる千代田 晴輝に何があったかを聞く。


ジト目で「何があったんだ?」と聞く玉ノ井 勇太に千代田 晴輝は「エグスとフィーデンが駄々をこねて大変なんだよ」と言う。


「は?」

「あの後…って言っても僕たちは岩山さんと飯能さんに助けて貰ってコルポマを目指して、途中で沖ノ島君と谷塚さんとコルポファを目指す戦場さんと合流してコルポマに行ったんだ」


話の最中に「あ、2人ともこっち見て。はいチーズ」と言って三ノ輪 彦一郎がが楽しそうに写真を撮って、横にいた草加 岬と板橋 京子の写真を撮ったりしていく。


「帰還に一年かかったのは力が貯まらなかったのか?それとも時差か?」

「あー…、それがこれだよ。さっきも言ったけどフィーデンとエグスが駄々をこねたんだ。力自体は2ヶ月で貯まったんだけど帰って欲しくないって言い出してさ」


聞き間違いかと思って「え?」と言うく玉ノ井 勇太に千代田 晴輝は「ほら、桔梗ちゃんと勝利君が居なくなって寂しくて塞ぎ込んじゃってさ…」と言うと梶原 祐一が「マジかよ、アイツら神様だろ?」と漏らす。


千代田 晴輝は2人の神を思い浮かべて「案外死なないだけの超能力を持った子供かもよ」と言って笑う。


「おいおいおい」

「それで、岩山さんが桔梗ちゃん達用に用意していたけん玉とボールで遊んであげて、こっちチームは岩山さんの他にも群馬さんと沖ノ島君と谷塚さん、後は三ノ輪先生も居て子供好きだからフィーデンとエグスと遊んであげていたんだ」


「あ…。わかった。それで帰らないでになったな」

「正解、帰るかわりに交わした約束は宝物にしてる上野さんの絵と皆の写真、後は珍しい表世界の玩具なんかで、約束破るとコルポマにスタークが溢れて滅びるかもってトーテッドさんにも言われたんだよね」


「マジかよ」

「マジだよ」


桔梗と勝利には万一エグスとフィーデンが字を読めると困るから「会いたい」「遊ぼう」は書かせないようにしてミミズが這ったような文字で「エグス、フィーデンげんき?ききょうはようちえんにいくよ。おもちゃでたくさんあそんでね」「えぐすとふぃーでん、ようちえん、かつとし」と勝利の方は「く」や「し」が鏡文字になっていたがなっていたが書けていて、セオが皆から言われた文章を向こうの文字で清書していく。

そして大きな段ボールにこれでもかと詰め込まれた玩具達に手紙と絵と写真、上野桜子の絵は劣化を恐れてこれでもかとコピーを用意されてコピー用紙を全部使う勢いでコピーを取られていた。


先程の教室の真ん中に置かれた段ボールは程なくして召喚の光に巻き込まれて消えた。

これで多分だがコルポマは救われただろう。


戦場 闘一郎達がホッとひと息つくと千代田 晴輝を見て「待たせた千代田!医師達が控えている」と言う。


千代田 晴輝は再会を惜しんでいて「え?別に急がなくても」と言うが、飯能 翠から「ダメですよ。岩山さんが言っていたではないですか、可能性があるなら治すべきです」と言われてしまい、喜びでニヤニヤの止まらない大塚 直人と豊島 一樹に「1人で行きたくないの?上野さん、付き添ってあげなよ」「そうだな、思う存分イチャついて来い」と言われ、そのまま、皆に言われるがまま渋々千代田 晴輝と上野 桜子が医師に連れて行かれた中で、セオとワオに抱きついた桔梗と勝利は谷塚 龍之介に「うほっほー」と挨拶をして「幼稚園に入園か、大きくなったな」と言われている。


教室に戻ろうとした面々に戦場 闘一郎は「あの教室はもう使えない。また寂しくなったエグスが何をするかわからない。また次の玩具を置いておく約束にした」と言って教室に立ち入り禁止のテープを貼った。

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