第46話 合流。

コルポマを目指して10日になる。

食料は予定通り減っていて荷物は軽くなるがいつ追っ手に追いつかれるかわからない緊張感と谷塚 龍之介と沖ノ島 重三を失った喪失感で皆の心は落ち込んでいた。


「なあ、ここまで来れば追っ手の心配は無いんじゃないのか?一度腰を据えて休まないか?」

途中で拾った木の枝を杖代わりに歩く玉ノ井 勇太の言葉に戦場 闘一郎とプリンツァがNOを突き付ける。


「ダメです。馬を使う以上このルートは悪路で追い付かれにくいですが、迂回路は舗装されていて馬ならまだ追い付かれます」

「そういう事だ。また追いつかれると後がなくなる」


この言葉の意味は谷塚 龍之介や沖ノ島 重三のような戦闘面で頼もしさを発揮した仲間がもういない事を指している。

別に豊島 一樹や大塚 直人、巣鴨 登達がダメだと言ってはいない。

単純にこれ以上の脱落者はチームの瓦解に繋がる。

その面で言えばムードメーカーの豊島 一樹と大塚 直人は欠かせない存在だった。


「あー…コルポマから迎えとか来てくれないかなぁ」

「な、馬車でお迎えにあがりましたってな」


そんなムードメーカー2人の言葉にプリンツァは「ええ。おそらくですが、もうすぐコルポマの防衛圏内です。コルポファの兵士達もおいそれとは近寄れません」と返す。


「マジで!?」

「お迎えは?」

目の色を変えて聞く豊島 一樹と大塚 直人にプリンツァは「それはもう少し進まないと難しいでしょう」と言った。


「でももう少ししたら可能性あるんだ!」

「ヤバっ!皆早く行こうぜ!」


楽しそうにペースアップをする豊島 一樹と大塚 直人を見て梶原 祐一と宮ノ前 桜は「ガキかアイツらは」「だけど皆明るくなれるんだよね」と言っている。


「それにうちの子供達は元気いっぱいだぜ?」

「本当、日本に帰ったら満足するまで遊んであげられるかしら?」

そう言って先頭を見るとエグスが「豪!早く行くぞ!」と言い、桔梗と勝利が真似をして「行くー!」「あー!」と言っている。


エグスが真ん中で右手に桔梗、左手に勝利の3人で手を繋ぐと疲れる事なく先頭を元気に歩いている。


子供達が元気なのはありがたい。

この行軍で重要なのは子供達がダウンしない事だった。


そこから更に半日進むと前方から2人1組の馬に乗った男達が現れる。

戦場 闘一郎と群馬 豪が身構える中、プリンツァは前に出て名を告げると相手はコルポマの兵士で「待っていた、心配したぞ」と言い、1人の男が「馬車を連れてくる」と言って帰って行った。


戦場 闘一郎が「馬だな」と聞くと「はい。馬はまだコルポファと交易をした頃に買った物です。それが子を成してここまで増えました」と答えた男は長時間歩けない玉ノ井と上野を馬に乗せると自分は降りて歩く。


「貴方方はコルポマから?」

「いえ、前線基地からです。前線基地はここから徒歩で3時間の所になります」


「コルポマは?」

「そこから大人の足で3日、馬車なら1日半、一度中継基地で泊まれば到着しますよ」


「我々の事はどうやって?」

「プリンツァ嬢と親書を交わした王自らが前線基地に来てくれています。王から話は聞いておりました」

プリンツァは驚きの表情で「え、トーテッド様自らですか?」と聞く。


「はい。事態は急を要するしコルポマで待って事情を伺うには時間が足りないから移動中に話を聞きたいと言うことです」


少しすると迎えの馬車がくる。

玉ノ井 勇太達はよほど疲れていたのか会話に参加することも出来ずに馬車に乗ると眠りについてしまう。

桔梗と勝利が寝てしまった事でエグスが不満を言うかと思ったが、馬車が珍しくて「豪!馬車はすごいな!」と喜んでいた。


前線基地はそこそこの規模で木製だが強固な壁で囲まれていて容易に突破するこは出来そうにない。そこには若く溌剌とした男が「良く来てくれた!プリンツァ!エグス様!そして表世界の勇者達!」と言った。


プリンツァが「あなたがトーテッド様ですか?」と聞くと男は「ああ、俺がコルポマの王トーテッドだ」と答える。

あまりの若さに驚いていると、エグスが前に出てきて「コルポマにはフィーデンがいるのか!?」と聞く。


「ええ、フィーデン様が降り立たれてからずっとエグス様とお会いできるのを楽しみにされていますよ」

「やった!フィーデンに会える!豪!皆を表世界に帰せるように頼むからな!」

この言葉に皆がホッとした。


トーテッド王はこの先の話を始める。


「フィーデン様には事情をお話しして転移の力を貯めてもらっている。あと2日もあれば転移が可能になるそうだ。今日はこのままこの基地で休まれるか?ここでは大したもてなしはできないがそれでもコルポファよりは贅を尽くそう」

豊島 一樹達が湧き上がったが、戦場 闘一郎だけは「いえ、お気持ちはありがたいのですが追走隊がおりますので可能であれば先に進みたいのです」と返す。


「まあ言い分はわからなくはないな。だがこの前線基地と途中の中継基地は強固だぞ?」

「すみません。念には念を入れたいのです」


この言葉で気分を害される可能性もあったがトーテッドは「わかった。では進みながら情報交換といこうと言って馬車で食べられる弁当の用意だけをさせるとさっさとコルポマを目指してくれる。


トーテッドの考えなのかコルポマの考えなのか、兵士達もセオとワオに対してもキチンと人権のある応対をして、切られた角を見て「辛かっただろう?」と言う。


意外そうにその姿を見る玉ノ井 勇太達にトーテッドが「不思議か?コルポマはコルポファとは違い亜人達とも手を取り合っている」と言った。

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