第47話 コルポファとコルポマの因縁。

三台に分けられた馬車の中では戦場 闘一郎と群馬 豪、玉ノ井 勇太と梶原 祐一がプリンツァとトーテッドと話をする。エグスは「桔梗と勝利が起きたからエグスはあっちがいい」と言ってセオとワオや草加 岬と宮ノ前 桜が居る2台目の馬車に行ってしまった。



「そもそもコルポファとコルポマの因縁から話させてくれ」


トーテッドの話では昔、交流のあった頃からコルポファの食料自給には問題があったと言う。

「そもそも亜人達を亜等と呼んで蔑み労働力としてしかみていなかった。どうすれば全員の腹が満たせるのか、不作の年にどうやって備えるのか、そう言う部分が全く考えられておらずに全ては亜人達の働きの結果として前向きに物事を見なかった」


「それではコルポマはどうしていたのですか?」

「我々は人も亜人達も関係なく等しく能力に応じて働く。不作の年に備えて可能な限り畑を広げて、豊作の年は長期保存が可能な形に加工したし、豊漁の時も取りすぎずに必要最低限だけを獲るように心掛けた。そして約110年前、遂にコルポファは大飢饉に見舞われた。

我々コルポマは隣国として最大限の支援を申し出た。

だが支援によって救われたコルポファは感謝も反省も何もなく、この先も永久的に助けさせてやると言い出した」


一瞬の間、直後に梶原 祐一が「え?」と聞き返し、群馬 豪が「聞き間違いか?助けてもらったコルポファの方が偉そうじゃないか」と言うと、トーテッドは「聞き間違いではない。コルポファは「コルポマが一度助けたのだから永久的にコルポファを助けるべき、助けさせてやる」と言い出した。こちらも不作の年に自身を優先して何もしなかったら「よくも見捨てたな」と言われた」と更に衝撃的なことを言う。

横でプリンツァが「…お恥ずかしい話です。私はトーテッド様から聞いてコルポファの歴史を調べるまで飢饉のことも何も知りませんでした。恐らく一般的な民や亜達は何も知りません」と言って肩を落とす。


「そしてコルポファは運良くエグス様を迎え入れた。プリンツァ嬢の話では言葉巧みにエグス様にフィーデン様を探すなどと言って加護と恩恵を得たらしい。

それでも労働量の絶対的不足で食料自給率が上がらずにエグス様の力で表世界から連れてきた馬達を我々に売って食糧を得ていた」


「もしかしてあの姫さんがパーなんじゃなくてコルポファの偉い連中全部がパーなのか?」

「恐らくな。それで100年前のコルポマの王はコルポファの統治に名乗り出た。コルポファの王は王のままで構わないから畑の運営や食糧に関して意見をするから従うように言ったが頑として受け入れず、いいからこれからも貰ってやるから食料を寄越せとだけ言ってきた。

だから民達の為にコルポマはコルポファへの進軍を決めて王政をやめさせようとしたら奴らはエグス様の力を使い、コルポファに結界を張り、戦力増強の目的で加護を施した。そして副次的ではあったが結界の為にエグス様がフィーデン様を探そうとしても飛び立てなくなり、人間達は頂上人を名乗り加護によりさまざまな恩恵を受けてきた」


「マジか…。どうしようもねぇなコルポファ」

「だがプリンツァやデリーツにプラセのような者も居る」


トーテッドの話に皆が思ったことを口にする。

どう聞いていてもコルポファはロクでもないし、頭が悪いと言わざるを得ない。


皆の言葉を聞いた後でトーテッドが「最後の文を貰って約1ヶ月、その間の変化を教えてくれ」と言う。

ここで戦場 闘一郎が「…そうだ。後続の救出隊がコルポファに残してきた生存者たちを回収してくる手筈になっている。表世界の人間が来たら保護を求めたい」と言った。


トーテッドは窓を開けて護衛の兵士に前線基地に戻って通達を出すように伝える。


その後でユータレスの現状なんかを伝える。

「ふむ。加護が無くなり結界が消えれば見込みはあるな。そうなれば平定に向かえる」


「なあ、今の話で気になったのはプリンツァと王様はどうやって連絡を取ったんだ?」

「私は信じている亜の方に手紙を渡していました」


「は?」

「コルポファは亜人達同士の交易は最低限認めていたんだ」


「え?だって結界張って隔絶して…」

「亜達には大変だったのですか、どうしても食糧は頂上人達に優先的に割り振ってその余りが亜達に回るのでコルポファとしても交易はやめられずに、セオやワオ達のように亜人の証を奪われた亜達が約7日の所まで物々交換に赴くのです。そして仮に不慮の事故があったとしても戻らぬ時は親兄弟は殺されます」


「本格的にコルポファって頭悪いな」

「お恥ずかしい限りです。その中で信じられる者に情報交換を頼みました」


「それで俺に近い亜人がたまたまプリンツァの話を持ってきたから、返事の手紙を渡したんだ。仮にプリンツァがスパイだとしてもコルポマに失う物はないしな」

「そうして情報交換が始まり、皆さんを表世界へと帰す話になりました」


「プリンツァのご先祖様が勇者の帰還に手を貸してきたと聞き、更に勇者達が肉体だけでも表世界に帰りたいとも言っていたから我々も協力したいと申し出た。この話を聞いたフィーデン様も快諾してくださった」


ここで群馬 豪が「そう言えば、何故フィーデンはコルポマから動かない?」と聞く。

トーテッドはバツの悪そうな顔で「フィーデン様は…、その…座する神…ではなく、言葉を選ばなければ壮絶な方向音痴だ」と言う。


「何?」

「かつて高祖父が王の代にコルポマに降り立ったフィーデン様がエグス様を探されていて、コルポファにいるかも知れないと言いコルポファを指差して説明をしたら指を見ながら全く違う方へ歩き始められた。高祖父達は慌てて呼び止めて、コルポマで待つことを提案した」


「…だから待つ神なのか」

「まあフィーデン様に聞いたエグス様もまだマシなだけで大概だ。歩けば良いのに神の力で移動をしてしまう。その力は無作為に飛ぶから離れる場合もあるらしい」


「そう言えば2人は出会った事はあるのか?」

「過去に何回も会っている。だが2人でいる間にフィーデン様が方向音痴を発揮してフラフラと居なくなってエグス様も探すために歩かずに力を使われるからすぐに離れ離れになる」


この説明に梶原 祐一と玉ノ井 勇太は「…マジか…」「ヤバいな」と言っていた。

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