第24話 見えてきた真実。
三ノ輪 彦一郎は手帳を読むと真っ青な顔で震えて愕然とするとプリンツァに「これは真実なのですか?」と聞いた。
「はい。それを書いた勇者様はお婆様に書いた内容を伝えていて、私もそれを口伝ですが誦じられるまで教えられて来ました。お婆様が信頼を得られずに間違った情報を教えられていなければ真実になります」
プリンツァの真っ直ぐな目に三ノ輪 彦一郎が「ふぅ…」と息をつく。
このやり取りが気になった梶原 祐一は「三ノ輪先生!?何が書いてあるんですか!」と詰め寄ると三ノ輪 彦一郎は「この手帳は富士の袂高校一年の神奈川 正義さんの物です。彼は40年前、この世界では3回目の召喚で連れてこられた者でした」
三ノ輪 彦一郎が読んだ話は表世界、日本では40年前…コルポファでは100年前、今と同じくユータレスへ赴く勇者として大規模な神隠しとして時間軸のズレとして裏世界では3年、表世界では1日に間に3つのクラスが消えてコルポファに召喚をされた。
神奈川 正義が呼ばれた時、高度成長期の恩恵かひとクラスの人数は40人近くいて、コルポファには約120名の人間が召喚され、3人が勇者としてユータレスに赴いていた。
何年経っても戻らない勇者。
だからこそ次々に召喚されてしまう。
だが当時は子供達の遊びは体を使うものばかりで皆屈強でスターク共に遅れは取らなかった。
これが当時の王達の反感を買った。
その時の隊長がプリンツァの曽祖母ビェイラで、ビェイラはフェルタイの意味などを含めて全てを知った上でこの召喚の意味を理解し、表世界の人間に加担をした。
結果、王の怒りを買ってしまい加護を外される事になっていた。
三ノ輪 彦一郎は手帳を梶原 祐一達に見せる事なく「救いのない話です」と言って泣いた。
プリンツァは「この100年、さらに先の話を私達は調べました。その話もありますが、まずは今の状況を理解していただく必要があり、手帳をお見せしました。お婆様は当時の勇者様達から意志を継ぐ者を助けに頼むと言われていました」と言うと三ノ輪 彦一郎は「ええ、手帳にはビェイラさんやビェイラさんの意志を継ぐ者と共に今度こそ生き抜いて欲しいとありました」と言った。
「良かった…。その上で聞きます。次に予測される召喚点の方々は戦力になりますか?」
「答えはNOです。トライジンインターナショナルの生徒達は国の違う子供達で意思疎通や常識面からして違いすぎます。京成学院とはまた別のトラブルになります」
「わかりました。では召喚は成功すると思いますか?」
この質問は梶原 祐一達には想定外で「は?」と聞き返す中、三ノ輪 彦一郎は「恐らくNOです。表世界は数時間の中で決断をしてトライジンインターナショナルに1日人を近寄らせません。やるとすれば監視カメラを教室に置いて召喚が起きるか確認したり、やっても家畜などの生き物を送り込むでしょう」と言った。
「わかりました。では最後の質問です。皆さんはどうしたいですか?」
ここで初めて三ノ輪 彦一郎は子供達にこの救いのない話を聞かせることにした。
40年前…裏世界では100年前、召喚された勇者達はフェルタイをやり遂げた。
だからこそ3回目の召喚で全てが終わりを迎えた。
だが犠牲は大きかった。
120名の生徒達はいくら強いと言われても装備が貧弱な100年前なので金棒もパチンコも無い中、剣と槍だけで戦い、半数が死んでいった。
だがフェルタイを成し遂げた今、表世界に大手を振って帰れると思ったのだがビェイラが耳にした話は残酷極まりなかった。
コルポファの転移は呼び寄せる際は電子機器が破壊される。
当時は電卓が転移に巻き込まれた事で判明していた。
そして送り出す際に恐らく生物は絶命すると言う事だった。
だが当時生き残った約50人は死ぬにしてもコルポファの地ではなく日本で死にたいとしてビェイラはその願いを聞き入れた。
そもそもユータレスは神の降りた場所として存在していて、エグスとは降臨された神の名で、当時の王の娘の姫は巫女として、エグスから与えられる加護を選別して振り分ける事ができる存在だった。
そしてスタークは穢れ等を表していて、排除する事で加護の延長が得られる。
そもそも加護は有限で、フェルタイを果たせば無限になるものではないらしい。
また、加護の力が弱まれば次の者達が招かれてしまう。
この手帳を読む者がどうか現れない事を願いながらコレを記す。
我々に尽くしてくれたビェイラやビェイラの意志を継ぐ者と共に今度こそ生き抜いて欲しい。
そう書かれて最後には「神奈川 正義」と書かれていた。
もれ響く嗚咽。
強くとも帰還の日を支えにここまで頑張って来た子供達には酷な話だった。
だがプリンツァは待つ事なく話し始めた。
「これは100年前の情報。100年の間にお婆様やお婆様の意思を受け継ぐ者達で調べ上げた情報をお話しさせてください」
ビェイラは転移を行った事で罰せられた。
フェルタイを成し遂げて不要になった勇者達を送り返した事を詰問されたが「終われば帰す約束だったからだ」と堂々と言った。
そしてビェイラは知らないことになっている転移についての問題点。
コルポファの転移は召喚時は無事でも転移時に生物が死ぬ可能性がある話を聞かされる。
そもそもは古い神を呼び寄せる召喚術の応用でしかなく、コルポファの土地が招く事に特化した土地だから生きたまま呼べるのだろうと召喚術を実用化させた亜は言っていたし、ビェイラ自身がその者を突き止めて聞き出していた。
そこでフェルタイを成し遂げたからこそ聞かされた真実。
呼ばれた勇者達はただの生贄でしか無い事、エグスへの供物でしかない事。
スタークの死と生贄の死がエグスへの供物になり、エグスが満足する事が即ちフェルタイで、生贄が死ぬたびにエグスの加護は延長され、頂上人は風邪なんかに怯える事もなく、様々な恩恵を得られ、そして外敵から守られる。
豊島 一樹と大塚 直人が「俺達…」「生贄なのかよ…」と呟くとプリンツァが俯いて「…はい。そして若い程良いのですが召喚の力が溜まるまでに全滅されては意味がないので若さと戦闘力のギリギリの所で皆様の年齢が選ばれます」と説明をした。
「確かに病院や老人ホームなんかは意味ないな」
「はい。若い者がスタークとの戦いで命を落とす事で供物になると言われました」
「だから京成学院の奴らをスタークに殺させた」
「デリーツは上手くやりすぎて外された」
6年目が目前に迫る中、見えてきた真実に全員が疑問だった部分に答え合わせのように呟いて行く。
大田楓はプリンツァを睨みつけて「ならアンタ!なんで私たちが帰れるように頑張るなんて言ったのよ!期待させたの?敵なの?」と涙を流しながら声を張る。
プリンツァは「いえ、100年の間に調べました。コルポファの転移はダメでも隣国コルポマの転移ならば可能性はあるそうです。あちらは送りつける専門で呼び寄せても生物は死ぬそうですが試験的に遠くに送りつけた兵士は無事に帰還しました」と言う。
「コルポマ…」
「隣の国…」
「このままここにいてもダメだからコルポマを目指せって話?」
「はい。その為に私達は隠れてコルポマとの話は進めています。やや曖昧で真偽は不明ですが元々はコルポファはコルポマの侵攻を恐れてエグス召喚に踏み切って交渉で加護を得たそうです」
「あー…コルポマが転移が可能になって侵略を恐れたコルポファがエグスで外敵に備えたということですね」
「はい。外は超常の力で守られていて加護のないものは外に出ると姫様に察知されます」
話が見えてきた梶原 祐一は「それで?さっきアンタが三ノ輪先生や俺達に聞いたどうしたいの意味を教えてくれ」と言うとプリンツァは真剣な表情で口を開いた。
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