第18話 内乱寸前。

女子の中では1人だけ浮いていた上野 桜子。

その理由はすぐに判明する。

進学校である京成学院の中では成績自体は下の方だが芸術面で秀でていて推薦で京成学院に入学していた事。大学も美大を視野に入れている生徒で勝田台 風香からすれば面白くない話でこのコルポファですらイジメを行っていた。

上野 桜子は自分の意思で手伝いに名乗り出た。

それは非常にありがたい事だったが、国府台 帝王と勝田台 風香が「代表で1人差し出してやったんだから」と言って一日中食堂にこもって6人の参考書を交換しながら受験勉強に励んでいた。



この狂った状況で1ヶ月半が経過したがストルトは京成学院の生徒達には何も言わずに避けている。理由は簡単で次の転移について聞かれると困る事、自分では何一つわからないからだった。

逆に参戦した上野 桜子がいる事すら感謝すべきだと言い出す。

もう内乱寸前だった。


桔梗と勝利の定期検診に来たプラセに状況を聞くと2度目の転移の予定はそもそもないという事で、理由としては賢く暴動の首謀者になりかねなかった大久保 勝之進を表世界に帰し、愚かな生徒しか残っていないのでどうとでもなると思われているとの事だった。


「デリーツからだ、切り捨てる覚悟ができたら言ってほしい。だがお前達ならその前に説得なりなんなりしたいだろうからやるだけやってみろだとさ。私なら働かないなら捨てるし、捨てるなら早い方がいい。傷口と一緒だ。放置してもいい事はない」

プラセの言った事は何一つ間違っていなかった。


翌週、一周目にあたる週に京成学院の生徒達を呼んでいい加減戦闘に参加するように言った。

だが国府台 帝王は拒絶をして腰巾着の小岩 茂が「そうだ!なんでそんな事をしなければならないんだ!」と言う。


「それにお前達の死んでしまった馬鹿な担任とは違って俺達の大久保先生は転移の約束を取り次いだ。だから次は俺たちだ!」

そう言った国府台 帝王の愚かしさに玉ノ井 勇太はキレた。


「お前達の担任は口封じで帰されたんだよ!向こうからこっちに助けに来るってどうやんだよ!無理だろ!?だから2度目の転移はない!あるならストルトに聞いてみろよ!」


玉ノ井 勇太に怒鳴られた国府台 帝王は顔を真っ赤にして「この…勉強出来ない低脳が…」と言い、腰ぎんちゃくの小岩 茂が「国府台さんになんて口の聞き方をするんだ!」と腰ぎんちゃくとして仕事をする。


ここで我慢の限界が来ていた大塚 直人が「うっせーよ腰巾着、じゃあスターク相手に問題でも出して撃退して見せてくれよ」と言うと豊島 一樹が「マジウケる!それっすよね大塚さん」と言ってバカ笑い…挑発をする。


それを見ていた西ヶ原 奏子が「豊島ー、豊島も腰巾着に見えるよ?」とツッコむと豊島 一樹が楽しそうに「え?マジすか?俺は大塚さんのソウルフレンドですよ!?」と返して荒川さくら高校のメンバーが笑う。


空気感は多少マシになったが良くないので梶原 祐一が「馬鹿話は後にしろ。とりあえず京成学院の連中は明日から訓練に参加しろ。来週からスタークがまた来るから戦闘に参加しろよ」と言って話を終わらせようとする。


そこに「誰がやるか!」と怒鳴った菅野 篤志だったが梶原 祐一から「やるか?スタークと戦い抜いてる俺達とお前達で戦ってどうにかなるのか?」凄まれて何も出来なくなる。


ここで三ノ輪 彦一郎が落とし所として「明日からの訓練には参加してもらうよ。君達が何を心の拠り所に生きても構わない。でも勉強面…偏差値や学校の序列なんてものは今この場では関係ない。皆平等に出来る事をして生き残るんだよ。そして今日は帰ってしまったけど今度の休みに来るストルトさんに転移の件をキチンと聞くといい。もしも転移で帰れるのなら君たちは優先して帰れるように先生からも言おう」と言った。


これに納得をした京成学院の生徒達は居心地の悪さから部屋に帰って行く。


「三ノ輪先生、良かったのかよ?帰れるってアンタだって子供さんと奥さん…」

「君達だってご両親が待ってるよ」


三ノ輪 彦一郎は笑顔で「年配は最後さ」と言うと大塚 直人が「だって京成学院の教師は帰って…」と反論をする。

大人は汚いと言いたいのだろう、それがわかっている三ノ輪 彦一郎は「きっと助けを求めにだよ。このままなら来年はトライジン・インターナショナルが被害に遭う。その前に止めたかったんだ。多分生徒達を逃してなんとか大人達を説得して軍隊でもなんでも用意をして乗り込んできてくれるよ」と言って大塚 直人を落ち着かせた。


大塚 直人が落ち着いて「はい」と言った所で谷塚が「楽観的ですね。まず最初にあの姫さんが返したって事が信じられないんですよ」と言う。


玉ノ井 勇太が「谷塚…お前」と口を挟むと「俺なら返した事にして殺す。口封じも出来て楽だ」とハッキリと言った。

この言葉に皆心のどこかで思っていた事を予見して怖い気持ちになっていた。

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