第16話 転移。
ショートとキチンと話が出来たのは転移1時間前で、ショートは南北高校と東武学園の多くのは人々を失った事を悔やんでいてリーブス姫が京成学院だけでも皆を帰そうと言った事に喜んでいた。
大久保 勝之進は聞き間違いを疑いながら「亡くなったのですか?」と聞くとショートは肩を落として「はい。スタークとの戦闘の結果です。彼等の話では表世界では戦闘には無縁との事でした」と言う。
「我々の日本では獣害を治める為に戦うものは居ても子供達にそんな経験はありません」
この言葉にショートは責任の重さから顔を覆って泣いてしまう。
まさか呼んだ子供達を戦わせていた事に大久保 勝之進は愕然とした。
そして同時に隔離された子供達の安否が気になった。
「ショート殿、教師は!?私のような年配の者は?教師はどうしているんです!子供達は!?」
「直接お会いして居ませんが、年配の方で生存されて居るのは3回目に来てくださった三ノ輪と呼ばれた方だけで、4回目の方は転移時に機械の身体だった為に亡くなりました。ご存知とは思いますが表世界から裏世界に来る際に複雑な機械は壊れてしまいます」
「機械の身体?ペースメーカーか…?確かにシャープペンなどの単純機械は壊れなかったが電子基盤を用いる道具類は皆ことごとく破壊されていた」
大久保 勝之進が思案をする中、リーブス姫が恭しく入ってきて大久保 勝之進に微笑みかけると「転移のご用意は整いました。後は15分程で発動できます」と言って横のショートを見て「ショート、表世界では恥ずかしくないように、コルポファの代表として勤め上げなさい」と言うとショートは恭しく、与えられた使命を全うする為気概が溢れ出した顔で「はい」と返事をする。
大久保 勝之進はリーブス姫を睨むと「姫、あなたは保護などと言いながら彼等を戦わせていたのか!」と声を荒げた。途端に表情を変えたリーブス姫は「あら?口止めしなかったとはいえショートはそんな事を喋ってしまったの?ふふふ、そうよ。あなた達表世界の人達には戦ってもらっています」と言った。
「何と言う事を!」
「あら、お返しする約束を反故にしましょうか?あなた方も表世界に帰還して翌日までに次の地点に戦える者を用意した方がいいと思いますけど?」
確かにそうだ。
ここで帰還の機会を失うよりもここで帰り、1日の間に人を集めて乗り込む方が賢い選択だ。
大久保 勝之進はそう思いグッと我慢をする。
「信じられないとしてもショートがついて行きます。ショート、キチンとコルポファの代表として強い勇者様をお導きするのですよ?」
「はい。今こそ勇者様達の犠牲に報います」
大久保 勝之進は緊張を理由にトイレに駆け込み、出発ギリギリに転移してきた部屋に通される。自分が選んだ8人の生徒達は帰れる事に喜び泣いていた。
「準備は整いました」
そう言って現れた姫は本性を隠して穏やかな姫の顔を演じている。
大久保 勝之進は敵意を隠さずに「私の残りの生徒達は?見送りに来れないのか?」と聞くと生徒たちに見えないように「あら…賢い方ならどう言うことかご存知かと思いますが?」と言ってニヤリと笑った。
この言葉で残りの生徒達も過去の生徒達同様にユータレスに送り込まれたのだろう。
残してしまった生徒達は、勉強は出来るが成績至上主義社会で幼い頃から生きてきたせいで考えが偏っていて選民思想に囚われていたり何かと序列を付けたがる生徒達なので周りとの不和が心配だった。
敵意をおさえながら大久保 勝之進は「ならば姫、言伝は頼めますかな?」と聞く。
姫は生徒たちの目がある以上、穏やかな物腰の姫として「何でしょうか?」と聞き返す。
「人は学力だけで測るものではない。世界は様々な人の力で回っている。決して驕る事なく手を取り合って生き延びろ…と」
大久保 勝之進の言葉と眼力にモブヘイやショートは天啓を得た顔をする。
恐らくコルポファでは髪色こそ全てなのだろう。
それを聞いた姫はまた生徒たちに見えない位置に動くとニヤリと笑って「ええ、必ず」と言った後で転移の作業を始める。
そして…「それでは、お約束の件をよろしくお願いします」と言う。
それは学生ではなく戦闘自慢の兵隊の事だろう。大久保 勝之進が頷くと姫は「表世界の言葉に素敵なものが御座いますね」と話した。
表情と言い振りを訝しむ大久保 勝之進に向かって「死人に口なし…素敵な言葉ですわ」と言った。
言葉の真意を探ろうとした時、大久保 勝之進の前は光った。
大久保 勝之進は光に飲まれながら、帰還したらすぐに行動に移さないと間に合わない。
過去の神隠しと京成学院の規則性を導いて次の学校の生徒達を避難させて罠を張る。
明日は土曜日…うまくいけば子供達は無事で罠だけ張れる。
そしてコルポファの危険性を伝えなければならない。
そして姫だ。
問題のリーブス姫。だがこのショートと呼ばれた男を帯同させた意味は何だ?
最後の「死人に口なし」の意味を考える。
助けに向かうと子供達は皆殺されているのかもしれない。
だがそうはさせない。
きっと日本の魂が彼等を奮い立たせるはずだと大久保 勝之進は信じていた。
意識が遠のく。
そういえば呼ばれた日も意識は遠のいた。
目覚めたらすぐに行動に出なければ…。
万一、死人に口なしが最悪を意味していても手は打った。
そして大久保 勝之進は意識がとだえる前に更に一手行動に出た。
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