新たなる召喚者達。
第13話 5年目の春。
年を越した。
年越しもスタークには関係なく、普通に攻め込んできてて豊島 一樹と大塚 直人は「良いお年を!」「今年もお世話になりました!」と言いながらグジュグジュを倒していた。
そして新年早々は一周目と被っていて少しだけ穏やかな時間を過ごせた。
1年は約52週間なのでどうしてもズレが出る。下手をすると月初めが二周目なんて時もある。
セオとワオは桔梗と勝利を本当に大切に育ててくれている。
そしてある日、町屋 梅子はセオとワオに味の好みを聞くとやはりコルポファの味付けとは離れていて日本食には頑張って慣れたと言っていて申し訳ないと謝ったりもした。
そうして迎えた新年度。
3月の最終週にデリーツは青い顔で現れると先に謝ってきた。
何事かと思って玉ノ井 勇太が聞くとデリーツは「この2年の日々が評価されて栄転となった」と言う。
「へぇ、良かったじゃないですか」
そう答えた玉ノ井 勇太に申し訳なさそうな顔をするデリーツを見て千代田 晴輝が「どうしたんですか?」と聞く。
デリーツは唸るように俯いた後で「私には言えない事、分からないことが多過ぎる。私は君達に感謝をしている。だからこそ本当に君達が困った時には亜達に言ってくれ!」と声を張った。
驚いた千代田 晴輝が「デリーツさん?」と聞くとデリーツは「栄転はありがたいんだ!だが私と君達ならこのままフェルタイの日まで常勝無敗なのに…」と言って苦しそうな顔をする。
「大丈夫だって、まあありがとう。困ったらセオとワオに言うからさ」
「今までありがとうございました」
「新型装備の事とか感謝しかありません」
玉ノ井 勇太や三ノ輪 彦一郎、千代田 晴輝達に感謝をされてデリーツは涙を流して頭を下げる。
そして「もし良ければ」と言って全員と握手をした後で桔梗と勝利を抱っこして「なんとか表世界に帰れる日を願っている。表世界や裏世界なんて事は抜きにして子供は国家の宝だ。だがそれよりもかけがえのない存在。きっと君達の両親も会いたいだろう。応援している」と言うと帰って行った。
その後ろ姿を見ながら玉ノ井 勇太、梶原 祐一、巣鴨 登が「案外良い奴だったのかもな」「熱い奴だったな」「仕事で割り切っていたのかもね」と言って呟いていると、ここで普段物静かな谷塚 龍之介が口を開く。
谷塚 龍之介は勝利が生まれた日、皆が沸きあがる中でも浮かれる事なく1人でいた。
それはコルポファに来た頃からで、心配した玉ノ井 勇太や蒲生 葉子が話しかけると「人嫌いなんだ。大丈夫、生き残る為に手は抜かない」と言っていた。
その谷塚 龍之介は「もしかすると…次の奴はロクデモナイ奴が来るかもな」と言う。そんな谷塚 龍之介の言葉に大塚 直人が「なんでっすか?」と聞く。
谷塚 龍之介は「あのデリーツの顔と栄転の言葉が噛み合ってない。もしかしたら結果を残したから外されたのかも知れない」と説明をした。
「えぇ、でも殺したいなら武器なんて渡さずにユータレスに入れちゃいません?」
「わからない事が多いからなんとも言えない。だが気を引き締めても良いのかもしれない」
そんな谷塚 龍之介の言葉は間違って居なかった。
セオとワオからは「次週に新たな勇者召喚を行います」「一年たっても多摩様が戻らないからです」と言う説明。
そして次の日曜日に現れた新任のストルトと言う男が現れたが初めから敵対心を剥き出しにしたような男で「今までの恩恵は今まで通り与えてやる。だが結果を出さなければすぐに打ち切る。やり切って見せろ」と言われた。
これだけで屋敷には不穏な空気が流れる。
玉ノ井 勇太に言わせるとセオとワオは毎回同じで「亜なので頂上人様のことは分かりません」としか言わない。
そして異常事態が発生した。
召喚されたはずの勇者がトラブルを起こしたと言う話をプラセから聞いた。
運良くと言うのも変な話だが桔梗が発熱をしてしまいプラセを呼んだ所、プラセから「デリーツに頼まれたから少しだけ世間話をしよう」と持ちかけられてそのまま「今年の勇者がトラブルを起こした」と言った。
「え?暴れたんですか?」
「いや、もっとタチが悪い。ある種お前さん達は優秀だったんだろうな」
「…梶原達も呼んで良いですか?」
「構わない。患者が薬を飲んで熱が下がるか確認してる間の世間話ならな」
そう言われてすぐに梶原 祐一、三ノ輪 彦一郎、千代田 晴輝が呼ばれる。
「今回の件、教えてくれますか?」
「ああ、簡単な話だ。頭のいい連中なのかわからんが、帰せって暴れた奴は居なかった。暴れれば兵士は取り押さえるだろう?」
「ええ、俺たちの時は尾久が姫さんに食ってかかって兵士に取り押さえられました」
そう梶原 祐一が言うとプラセは「今回の奴らは姫様が勇者を見つけた時に「何ですかそれ?お断りします」と言い出した。そしてその場で全員が頑として表世界に帰せ」と言って座り込みを行なって、何を言われても言い返した」と説明する。
「マジか…。多分京成学院の奴らだがすげぇな」
「厄介極まりない連中だ。そのままなんで表世界の勇者が求められるかの説明から「不血の誓い」を聞き出すと1人の男が自分の指を切って血を出して姫に詰め寄った。不血の誓いがあるなら血を近づける。更に兵士が近づけば鎧で身体を切って不血の誓いを破らせると言い出した」
「それってどうなるんですか?」
「前代未聞で、早速ストルトは責任者として姫から詰められて勇者不在の勇者召喚になりかねない」
勇者不在の勇者召喚…。それは無茶苦茶な話だった。
勇者を呼ぶ為に巻き添えにされた自分達。
やはり勇者を呼ぶのは建前で本音は召喚なのではないか?
ここまで話す間に桔梗の熱が下がっていてプラセは帰って行く。
そして玉ノ井 勇太達は一つ間違いを犯していた。
この場に谷塚 龍之介を呼んでいれば、別の着眼点によってまた違う話があったはずだった。だが誰一人として谷塚 龍之介を呼ばなかった。
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