生き残る為に戦う。
第6話 戦闘訓練。
今日から戦闘訓練が始まる。
玉ノ井 勇太が傘立てのような筒から武器を出して見せながら「これが一応メイン武器の剣と槍、後は金棒な。これらは消耗品扱いで良いからガンガン使ってくれ」と言い、梶原 祐一が「とは言え、月間の支給上限はあるからそこら辺は意識してくれな」と続けた。
「金棒?」と聞き返す豊島 一樹に草加 岬が「私達、剣の経験なんてないから金棒も絵に描いてセオちゃんに渡したらすぐに作ってくれたのよ」と言う。
「それで、多分本来のメイン武器はコイツになる」
そう言って玉ノ井 勇太が見せてきたのはY字の棒にゴムがついている武器だった。
梶原 祐一が「まあ名前は無い。俺達はパチンコって呼んでる」と言うと豊島 一樹が「まあ確かにY字の棒にゴムならパチンコっすね」と感想を述べて、千代田 晴輝が「球は?パチンコ球ですか?」と聞いた。
「いやいや、そこは魔法アリの異世界様な訳で、これだ」
そう言って出されたのは赤青黄色のビー玉だった。
「ビー玉っすか?」
「魔法入りのな、セオ達亜が街で内職がわりに魔法を込めてくれてる。火と氷と雷が入ってる。基本的にはユータレスから上がってくるスターク達は近付く前にパチンコで数を減らす。そして最悪接近されたら剣や槍でブチ殺す」
説明を受けたメンバーは皆武器を手に取りパチンコを試す。
日常生活にはない感覚で訓練が楽しくなる。
汗を流して好き勝手に暴れる事の喜びと言ったらなかった。
訓練のはずなのだがはしゃいでしまう東の京の面々に玉ノ井 勇太が「あ、言い忘れたけど怪我を治す魔法って無いらしいから怪我すんなよな」と言った。
これを聞いていた千代田 晴輝と豊島 一樹が「は?」「え?」と聞き返す。
呆れ顔の梶原 祐一が「普通考えればわかるだろ?死んだ市ヶ谷さんは失血死。怪我が深くて血が止まらなかったんだよ」と説明をした。
豊島 一樹が「ええぇぇぇ」と言うと千代田 晴輝が慎重な顔で「あと言い忘れたこととかは?」と聞く。
「ん?ああ!週に一度隊長さんがくる」
「あの野郎使えないからなぁ」
「頑張ってるか?」
「頑張れ、期待している。しか言わないし」
隊長の悪口を言う玉ノ井 勇太と梶原 祐一に草加 岬が「でも資材の供給はキチンとやってくれるからマシよ」と釘を刺す。
こんな感じで初日は笑顔で訓練は終わる。
2日目には筋肉痛に泣かされたが皆でマッサージをし合ったおかげで3日目にはまた普通に訓練ができた。
4日目、玉ノ井 勇太に言わせると「今日が日曜日な。まあスターク共には土日なんて関係ないから無駄かもしれないけど日曜だけは忘れないようにオカズを一品増やしてもらってるんだ。隊長にはリズム維持の為って言ったら「リズムは大事だな、許可する」だからな」だった。
そしてその日曜日に隊長という男が来た。
「吾輩はデリーツ。貴君達の隊長という事になる。…ふむ。今回は人数が少ないのだな」
そう言ったデリーツの髪色は濃い水色でパッと見は三十路くらいの神経質そうな男だった。
デリーツは梶原 祐一の前に立って「勇者殿の件は残念だが次の勇者様が来てくれた。貴君達はフェルタイの日までユータレスから出てくるスターク達を蹴散らしてくれたまえ!」と声高に言う。
初めて見るが、多摩 剛をユータレスに送り込んだ姿を見ていた東の京の生徒達は白々しい話だと呆れてしまっていた。
「我々は勇者様の友達にも最大限の配慮をする。そちらの者も出産は最大限のサポートを行うから安心してくれ!」
この言葉に宮ノ前 桜は「ありがとうございます」と言う。
ここで千代田 晴輝が「もし武器の改良を願えばやって貰えるのですか?」と聞くとデリーつは「おお!血気盛んな若者よ!以前のように図案があればそこの亜共に渡してくれれば用意して見せよう!」と言って帰って行く。
千代田 晴輝はデリーツが出て行った玄関を見て「んー…」と言って悩む。その姿に玉ノ井 勇太が「なんか希望あるのか?」と話しかけると「いや、武器は実は口実で頂上人達が何を狙いにしているか知りたかったんですよ」と返す。
「狙い?」
「仮に多摩君がどうでも良いとして、アイツらは何がしたいんでしょう?」
千代田 晴輝は思い悩んでいた。
正直戦わせたいから武器は供与する。
食事も品数を増やす。
だが勇者は偽物で翌年の勇者が現れると演技かもしれないが「残念だ」と言う。
これは玉ノ井 勇太達も想っていた事で「それな」と返事をする。
「それに仮に僕達が全滅をしたらこの世界はどうなるんでしょう?風習を重んじて亜達にも助けてもらわずにスタークに殺されるのでしょうか?」
「あー、それか。前に南北高校の志茂って子が前の隊長に聞いたんだよ。その隊長はまだ良い奴でさ、あれこれ気遣ってここだけの話って言いながら答えてくれたんだけど、頂上人にもランク付けされてて、低ランクの頂上人が権利を剥奪させて亜以下の存在にされるとこの部屋に送られるんだとさ」
「しかも初めは低ランクでも続々と負けたら最後にはあの姫さんにまで白羽の矢が当たるらしい」
この説明に千代田 晴輝は「だから必死に衣食住に医療や装備品に手をかけるのか…」と自分なりに納得をする。
確かにスタークを倒す為の駒が減ると自分たちの順番が回ってくるのであれば鼓舞して衣食住や装備に手を尽くすのも納得だった。
千代田 晴輝が納得をすると玉ノ井 勇太が「まあそう言う事だな」と言った。
「後、気になったんですけど、男連中だけで戦って女性陣をこの館に入れる事は不可能なんですか?」
この質問に屋敷の中では女性陣を気遣う大塚 直人ですら「それは無理」と言い、驚く豊島 一樹に向かって横に居た浅草 翔太が「一度戦えばわかるさ、この屋敷の中では女子供の扱いはあっても外に出ればそれは無い。確実に男が死ねば秒で女も死ぬ。だから平等に戦うしかないんだよ」と言っていた。
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