第5話 身近にある死。
過去4件の神隠し事件の真相はコルポファによる勇者召喚で、勇者に選ばれた生徒以外は巻き添えを食ってコルポファに居た。
そして過去4件の勇者召喚から見えた事実は勇者に選ばれた男達は「異世界オタク」ではないかと、説明を聞いていた東の京高校の豊島 一樹はそう言った。
玉ノ井 勇太は「いや、おそらく違う」と忌々しそうに言うと「あの姫さん、おそらく全員を見て1番チョロそうなやつを狙ってる」と言葉を続けた。
「え?」
「だから、このふざけた状況を即座に理解して受け入れた連中の中で1番転がしやつい奴を選んでんだよ。きっと勇者なんて決まってねえ」
ここで梶原 祐一が「あの女のセリフは一字一句同じなんだ。慌てふためく俺たちを見て落ち着けと言う、そしてコルポファの名前を言って困惑する俺たちを見て「ちょろそうな奴」を見つけて伝説の勇者とか言って連れて行く」と続けた。
確かに言葉通りだった。
「じゃあ目的って…」
「それはわからないが選ばれて顔付き変えてユータレスを目指したアイツラは勇者なんかじゃないって事は確かだ」
ここで呆れ口調の玉ノ井勇太が「そしてそうなればあいつらがフェルタイできるなんてのは夢のまた夢だろうな」と続ける。
「…じゃあ終わったら返す話は?」
「その気なんかないのかもな。だが気になるのはセオの話では勇者召喚は初めてではないそうだ」
豊島 一樹がポンポンと皆が聞きたいことを聞いて、それに玉ノ井勇太達が答えていく。
千代田 晴輝が「でも連続した神隠しなんて聞いたことが無い」と言った言葉に三ノ輪 彦一郎が「いや、昔僕が君達くらいの頃に聞いた話で、確か今から40年くらい前に神奈川や山梨の方で大規模な神隠しが起きたらしい」と答えた。
千代田 晴輝は自身の服を持って「その頃の名残がこの家とこの服だと」と言う。
「それで、俺達はどうなるんですか?」
「生き延びるために戦う事になる」
「何と…ですか?」
「ユータレスから上がってくるスターク共とだ」
ここで東の京高校のメンバーは簡単な説明を受けた。
ほぼ毎月スタークと呼ばれる魔物が現れるタイミングは決まっていて、スタークはコチラを殺しにくるので徹底抗戦が必要な事。
今は攻撃期を越えた後の休眠期でスターク達はユータレスの中で休んでいる事。
コルポファの連中は休眠期を狙って勇者召喚を行った事。
ここの衣食住医療は最低限整っている事。
「え?俺達だけでそのスタークとか言う化け物を殺すんですか?」
「この国の人達は?」
この質問に玉ノ井 勇太が「セオ、説明よろしく」と言う。
「はい!」と元気よく現れたセオは「簡単にこの世界を説明しますと私達[亜]と呼ばれる種族と姫様達のような[頂上人]に分類されます。頂上人の姫様達は古くからの誓い[不血の誓い]によって生き物を傷付けることが許されません。その為にいくらスタークと言えども戦いは許されません。その為に国を守る勇者様達が必要とされています」と言う。
「亜…というのは?セオさんも他の人達と同じに見えますよ?」
この言葉にセオは申し訳なさそうに三角巾を外すとおでこに見なれない突起があった。
「セオは俺たちの世界で言う創作物に出てくる亜人と言う奴だな。なんでも頂上人からしたら人間未満であっちの山で暮らしてるんだそうだ」
玉ノ井 勇太が指差したのはもう一つの山だった。
「あそこは亜の街です。頂上人様達は皆お城に住んでいます」
「本来ツノがあったがここで仕事をする為に切り落とされたんだとさ」
「え!?酷え!」
豊島 一樹の言葉にセオは嬉しそうに「ありがとうございます。表世界の皆様は皆そう言ってくださいます」と言い「ですがこれが皆様方が戦われる理由なのです」と続けた。
「不血の誓いによって戦えない頂上人、存在そのものが穢れている我ら亜、亜は戦闘は可能ですが穢れた存在なのでユータレスには赴けません」
まさかの発言に東の京高校の生徒達は何も言えなくなる。
ここで話をまとめたのは玉ノ井 勇太で「そこから考えたのは、もしかしたら本気でたまたま異世界オタク達が偶然選ばれた勇者とか言う奴なのかもしれない。だが違う場合、ストークと戦わせるためだけに俺たちを呼んだんじゃないかと言う事だ」と言った。
「…そ…そんな」
「本当、そんなだけどセオに聞くと勇者召喚とか始めたりスタークが出てきたのは4年前だと言う。前の連中がやり切れたのかどうなのかわからないが倒せば終わるのかフェルタイをすれば終わるのかはわからないが延々こんなことを続けないで済む為にも、生きる為にも戦うしかないんだ」
「後はまあもう気づいているだろうけどスマホは壊されてる。機械類は転移に耐えられないそうだ」
この話に沖ノ島 重三が「それは聞いたし…もう来た瞬間にわかったんだ」と言うと東の京高校の生徒達は暗い顔になる。
「何があった?」
「教科担任の坂登がペースメーカー入れててそれが壊れて死んだんだ」
「そうか…、それは残念だったな。多分後程裏に埋蔵されるから皆で手を合わせような」
示し合わせたように坂登の遺体が届き、皆で埋葬をした。
そこにあった墓標を数えると坂登の分を入れて59あった。
登坂の荷物も欠品なく届けられたのでセオが「責任を持ってお預かりします」と言って持っていった。
夕食の場になり食堂に皆が集められる。
お世話人はセオだけではなくワオという亜もいた。
ワオは小さな女の子を抱っこしていた。
亜の子供なのかと思ったが黒目黒髪の子供で板橋 京子達は一瞬思考停止する。
照れるように玉ノ井 勇太が「俺と草加 岬の娘だ」と言う。
そんな玉ノ井 勇太の横で照れている同世代の女性が草加 岬だろう。
豊島 一樹が立ち上がって「え?コルポファで?結婚?」とプチパニックになると玉ノ井 勇太が「…こっちに転移してきた時に数日間荒れててな…、それで…」と言い、草加 岬が「まあ…このまま死ぬくらいならってね…」と頬を染めて言った。
ワオは「私がお世話をさせてもらってます!」と言った後で「ね〜」と女の子に話しかけて女の子も「うん」と話す。
「お幾つで…」
「1歳と3ヶ月だ。去年の1月に生まれた。と言っても転移日を起点にして無理矢理数えたんだけどな」
「あの姫さんたちはこの子の事は?」
「大歓迎だと、産めや増やせや大歓迎ってな…」
正直、戦うために呼んでおいて子を成すなんてと怒られるか最悪殺されるかを想像したが大歓迎と言われて困惑してしまう。
混乱を察したのだろう梶原 祐一が「でも戦いは免除にならない。草加さんは臨月でも戦わされてたってよ」と説明をした。
「…ってか…あの、梶原さんのお隣ってあるぇ?」
豊島 一樹の素っ頓狂な声に「まあ、かく言う俺もこの宮ノ前 桜とまあそうなってんだ」と照れ笑いをする。
宮ノ前 桜は重そうに立ち上がると「あと2ヶ月くらいって話。戦闘では足引っ張るかもしれないけど…ごめんなさい」とキチンと挨拶をする。
東の京の皆が驚いていると三ノ輪が「いやはや、担任としては帰った後で親御さんになんてお伝えしようかと…」と口だけは困ったと言うが、顔はもっとやれと書いている。
「リーダーシップがあって顔のいい奴ってのが得するんだよなー」
そう言ったのは荒川さくら高校の大塚 直人で「俺はいつでもウェルカムなのになぜモテない!」と言うと女子たちから「だってアンタ紗栄子一筋じゃん」と笑い飛ばされる。
コソッと玉ノ井 勇太が豊島 一樹に「紗栄子ってのは、外の墓標にいる。栄町さんな。軽口叩いて安心させてたけどスタークとの戦闘で死んじまったんだ」と説明をする。
豊島 一樹はノリの良さで「わかります!俺もいつでもウェルカムなのにモテません!」と何も知らないフリで話しかけると2人で肩組んで「モテたい!」「モテたいっす!」と話し出す。
若干湿っぽかった女子達は「君もそっち系?」「そんな顔だよね」「生き残りたいよりモテたいなの?」と言って笑う。
まだ実感はないがここにはいない人間、裏の墓標が身近な死を意識させて東の京高校のメンバーは恐怖に囚われた。
明日からは戦闘訓練になるからと説明を受けた後でご馳走を食べて早寝をした。
ご馳走の味付けは日本食に近くてとても美味しかった。セオとワオに聞くと「かつてきてくださった勇者様達から味付けの好みも聞きましたし、もう4年目です。お任せください」と答えられた。
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