第3話 異世界召喚。
光、突然教室の真ん中が光ると光の球が宙に浮かんでいる。
どよめきとざわめき。
坂登 大介が「何これ?」と言った時…何人かの生徒は危険を察知して廊下に飛び出す。
板橋 京子も同じように飛び出そうとした。
人は何故か咄嗟の時、想定外の行動に出る。
板橋 京子は何故か机の横にかけられたスクールバッグを手に取っていた。
そして、何故か今朝母が持たせてくれた弁当の巾着袋を取らなければと思った時、光が広がり気を失った。
目を覚ますと石造の床の上にいた。
先に目覚めたクラスメイトが「なんだここ!?」と言う声で板橋 京子は目を覚まし、他のクラスメイトも起きて騒ぎ出す。
「皆様、落ち着いてください」
そう聞こえた先には青い髪で綺麗な顔立ちの女性とその両サイドには強面の男性が長い棒を構えて立っていた。
突然の事に怯える2年3組の生徒達を見て穏やかに微笑んだ青い髪の女性は「ここは皆様の世界からすると裏世界になりますコルポファです」と言った。
女と目があったのか豊島 一樹が「裏世界?」と聞く。
豊島 一樹は板橋 京子と去年1年同じクラスだった為に名前と顔が一致している。
「はい、裏世界で御座います。この世界は危機に瀕しています。式たりに則り世界を救う勇者を表世界から召喚しました」
豊島 一樹の質問に丁寧に答えた女。
異世界だの召喚だのとWEB小説やアニメ、創作物でもあるまいにと板橋 京子は思っていると青い髪の女性は「あ……ああ、お会いできました勇者様!」と震えて涙を流して人をかき分けながら多摩 剛の元に行く。
多摩 剛も去年は板橋 京子と同じクラスだったので名前と顔が一致する。
気弱ないじられっ子で勇ましさの真逆に居るような男だった。
「ぼ…僕が勇者ですか?」
「はい!予言書の通りです。そのお顔立ち、そのオーラ、見まごうことは御座いません」
そのまま女は多摩 剛の手を取って部屋を後にしようとする。
訳のわからない状況に学級委員に立候補をしていた千代田 晴輝が「先生、起きてください!大変です!」と今も横たわっている坂登 大介に声をかける。
だが坂登 大介はうんともすんとも言わない。
その姿のなんとも言えない違和感と気持ちの悪さを感じる中、「どきたまえ」と近づいた強面の男は坂登 大介の顔に手を当てると「死んでいます」と言った。
身近な人間の死に2年3組の生徒達はパニックになり悲鳴が飛び交う中、「召喚で亡くなる?聞いた事が無い」と青い髪の女性が呟く。
そして多摩 剛に「勇者様、あのお方は機械のお身体ですか?」と聞いた。
「はい。心臓に機械を入れています」
素直に答えた多摩 剛の前で顔を両手で覆って「ああ」と泣き出す青い髪の女性。
「勇者様をお招きする為とは言え、このような事になるなんて」
それを聞いたもう1人の強面が「姫様、これは致し方ない事です。姫様が悪い訳ではありません」と声をかける。
「表世界の皆様、この世界に来られるのは生きているものに限定されるのです。表世界の機械と呼ばれるものは全て召喚時に壊れてしまいます」
この説明に皆がスマホを取り出して電源を入れようとするがうんともすんとも言わない。
訳のわからない場所に連れて来られて人死を見てそしてスマホまで動かないとなるこの事態は高校二年生には荷が重すぎていて皆限界ギリギリになっていた。
中にはスマホを振ってみたり手でこすってみている者もいる。
姫は多摩 剛をその場に立たせると残りのクラスメイトの前に出て「表世界の方、申し訳ございません、勇者様をお招きする為とはいえ、皆様を巻き添えにしてしまった事は申し開きできません。今、転移の為の力は使ってしまい溜まるまではコルポファで過ごしていただくほか御座いません。勇者様がユータレスに赴いて最奥にあるとされるエグスに到達し、フェルタイをすればこの世界コルポファは救われます」と説明をした。
嫌な予感は確信になる。
帰れない。
とにかく当分はこの世界にとどまる事になる。
そうすぐに理解できた。
姫は「そちらのお方の埋葬はさせていただきます。ご遺品は後でお持ちいたします」と言うだけ言って多摩 剛を連れて部屋を出ていく。
残された強面が「今晩は城で僅かばかりのおもてなしをする。食事も出る。安心するように、だが勇者殿はこれより勇者の儀式を行う関係で別行動となる。だが明朝の出立式で会えるから安心するといい」と言うとさらに強面が数人入ってきて板橋 京子達は別室に連れて行かれた。
寝るためだけの部屋はたまたま転移前に教室から出た生徒達、死んだ坂登 大介、そして勇者だった多摩 剛のお陰で全員がベッドを1人ひとつ確保できた。
出てきた食事はパンと肉と水。
不味くは無いが味付けは好みでは無い。
何となく食事からも別世界だと言うことはわかってしまい、またクラスメイト達は泣いていた。
明朝、起こされると多摩 剛の出立式に参列させられた。
多摩 剛は別人の顔でクラスメイト達に手を振ってその先で待つ姫とハグをする。そして「行ってきます」「ご武運を」というやりとりの後で大きな荷物と純白の鎧と剣を渡されるとそれらを身にまとってユータレスとか言うのに突入していった。
外で見送るとこの城は対になる二つの山。その片方の頂上に建てられていて、ユータレスはもう一つとの山の麓、そこが赤紫色の気持ちの悪い光を放っていた。
多摩 剛を見送った後、姫が突然豹変して高圧的な態度になる。
「オマケの皆さん、働かざる者食うべからずでしたわね?表世界の素敵な言葉ですわ。コルポファには働かない者を食べさせる義理はございませんの。勇者様がフェルタイを成し遂げて戻られる日までの仕事を差し上げますから頑張ってください」
そう言われて歩かされる先は先程多摩 剛が進んで行ったユータレスだった。
だが連れて行かれた先はユータレスではなかった。
ユータレスの周りには2枚の巨大な壁と巨大な門、そして外側には門番がいてニヤニヤと笑いながら「頑張れよ」と声をかけてきた。
目があってしまった板橋 京子は会釈だけをして門の中に入る。
門の中に見えるもう一枚の壁は建物の二階分の高さで背後にそびえる外側の壁は建物の四階分の高さだった。
姫が指差した先にはボロボロになった大きな建物がある。
「あの中にあなた達の仕事を説明するものがいます。中で全てを聞いて勇者様がフェルタイをなされる日をお待ちください」
そう言われた東の京高校2年3組の生徒達は建物に入っていった。
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