第2話 異世界召喚。
光、突然教室の真ん中が光ると光の球が宙に浮かんでいる。
どよめきとざわめき。
入学式、オリエンテーション、身体測定を終えてこれから授業が始まる矢先の出来事。
担任の三ノ輪 彦一郎が慌てて教室の外に出ろと言ったが次の瞬間には光が広がり気を失った。
目を覚ますと石造の床の上にいた。
先に目覚めた中学の時から友達、熊野前 康平が「なんだここ!?」と言う声で皆が起きて騒ぎ出す。
「皆様、落ち着いてください」
そう聞こえた先には青い髪色をした豪華な服装の女と両サイドにはRPGゲームのCMやファンタジー映画なんかで見かけるザ・兵士と言う出立の男が長い棒を構えて立っていた。
どよめくクラスメイトを三ノ輪 彦一郎が前に出ながら制止する。
そうすると穏やかに微笑んだ青い髪の女は「ここは皆様の世界からすると裏世界になりますコルポファです」と言った。
「裏社会?怖っ」と言ってこの状況下でも馬鹿笑いをする荒川 大輝とか言う奴。
出席番号1番はこう言う時に覚えやすい。
「いえ、裏世界で御座います。この世界は危機に瀕しています。式たりに則り世界を救う勇者を表世界から召喚しました」
荒川 大輝のヤジにも丁寧に答えた女。
この世代ともなればゲームの知識も映画の知識もある。
アニメオタクだと入学早々自己紹介のときに荒川 大輝にバラされていた小台 空が「異世界召喚キター!」と喜ぶ。
そんな小台 空を見て青い髪の女は「あ……ああ、お会いできました勇者様!」と震えながら涙を流して人をかき分けながら小台 空の元に行く。
「ぼ…僕が勇者?」
「はい!予言書の通りです。そのお顔立ち、そのオーラ、見まごうことは御座いません」
そのまま女は小台 空の手を取って部屋を後にしようとする。
だが、ここで待ったをかけたのは喧嘩っ早い尾久 昇だった。
「おい女!勇者だかなんだか知らねえがお前の会いたかったのがその小台…だったか
?小台なら俺達無関係だろ?さっさと荒高に返せよ!」
尾久 昇の勢いに乗じて担任の三ノ輪 彦一郎も前に出て「そうです。僕は荒川さくら高校1年6組担任の三ノ輪と申します。事情を話してください!そして僕たちを帰してください。生徒たちの親御さん達も皆心配しています!僕にも妻と娘が待っています!」と言う。
ちゃっかり自分のアピールを忘れない三ノ輪 彦一郎に苦笑をしてしまいながら動向を見守ると、女の横にいた兵士達はあっという間に尾久 昇を無力化して「姫様になんと無礼な」「いくら表世界の方でも許されませんぞ」と注意をする。
この説明だと青い髪の女は姫と言うことになる。
まあ言えるのは姫とか言っても髪が青い女は日本人からすれば違和感が凄い。
目鼻立ちが整っていても魅力を感じない。
いくら美味しい海鮮丼だとしてもきっと魚や米が真っ青だと食欲をそそられない。
それに近い感じだった。
小台 空を待たせた姫は無力化された尾久 昇の前に膝をついて「表世界の方、申し訳ございません、転移の為の力は使ってしまい溜まるまでは帰れません。勇者様がユータレスに赴いて最奥にあるとされるエグスに到達し、フェルタイをすればこの世界コルポファは救われます」と説明をした。
この段階で嫌な予感がしていた。
帰れない。
小台 空が到達できない時の話、仮に小台 空が到達できずに転移の力とか言うのが溜まれば帰れるのか?
そう思った時に三ノ輪 彦一郎が姫に聞く。
「…それは小台君が戻らないと我々は帰れないと言う事ですか?」
「ええ、勇者様が到達されて無事にご帰還なされれば元の世界に転移させる事をお約束します」
クラスに広がる絶望感。
女子だけではなく男子までもが嗚咽を漏らして泣く。
そんな中、1人意気揚々としているのは小台 空で「僕が勇者」「僕が世界を救う!」と盛り上がる。
ここでじっと事態を見守っていた梶原 祐一が前に出て姫に話しかけた。
「数点教えてください。小台がフェルタイとか言うのをすれば帰れるんですか?」
「はい、それはお約束します」
「小台がそのフェルタイをする前に転移の力とかが溜まれば先に俺たちは帰れるんですか?」
「きっと勇者様は成し遂げてくださいます!そんな失礼なお考えはお捨てになってください!」
「大事なことです。仮に小台が何年かかっても戻って来なかったら?」
「伝説の勇者様には失敗はありえません。お話は以上ですね?今晩は城で僅かばかりのおもてなしを行いますので裏世界の食事を召し上がってください。ただ勇者様はこれより勇者の儀式を行いますので別行動となりますが明朝の出立式にはお会いできますのでご安心ください」
話にならない姫は言うだけいうと小台 空を連れて部屋を出ていく。
睨みをきかせた兵士達がさらに数人入ってきて梶原 祐一達は別室に案内をされた。
案内されたのはタコ部屋のような部屋で、ベッドは足りずに雑魚寝になる。
三ノ輪 彦一郎は教師としてベッドは使えないと言い、女子達を優先させる。
女子達は仲の良い女子同士でベッドを共有する事で少しでも男子達にベッドを譲る。
食事は何も考えずに出されたパンと肉を水で流し込む。
何人かはなんの肉かを気にして吐きそうになっていた。
だが食事だけは十分な量が用意されていたので空腹だけは無かった。
そして…夜中に兵士たちの目を盗んでスマホを取り出したが誰一人通電すらしなかった。
その事でさらに絶望感を味わうことになり一晩中誰かしらの啜り泣く声がタコ部屋に響いていた。
明朝、起こされると小台 空の出立式に参列させられた。
小台 空は一晩で人が変わったかのように自信に満ちた顔でクラスメイト達に手を振るとその先で待つ姫とハグをする。そして「行ってきます」「ご武運を」というやりとりの後で大きな荷物と純白の鎧と剣を渡されるとそれらを身にまとってユータレスとか言うのに突入していった。
外で見送るとこの城は対なる二つの山の片方の頂上に建てられていてユータレスはもう一つとの山の麓、そこが赤紫色の気持ちの悪い光を放っていた。
小台 空を見送った後、梶原 祐一達の事態は一変した。
豹変と形容する事が相応しい程に突然姫が高圧的な態度になる。
「オマケの皆さん、働かざる者食うべからずでしたわね?表世界の素敵な言葉ですわ。コルポファには働かない者を食べさせる義理はございませんの。勇者様がフェルタイを成し遂げて戻られる日までの仕事を差し上げますから頑張ってください」
そう言われた梶原 祐一達は山の麓、小台 空が向かったユータレスに連れて行かれる。
ロクな装備もないままに危険なところに連れていかれるのかと女子達は泣き叫び、男子達は無謀にも兵士達に立ち向かい殴られていった。
ここで梶原 祐一に一つの疑問が生まれた。
小台 空が剣を持ったところは見たが兵士達が剣を持っているところを見ていなかった。
その理由はわからないがなんらかの意味があるのだろうと思っていた。
そして連れて行かれた先はユータレスではなかった。
ユータレスの周りには2枚の巨大な壁と巨大な門、そして外側には門番がいて嫌らしい嘲笑で「頑張れよ」と言われた。
中に入るともう一枚の壁は高くても建物の二階分で外側は四階近い高さなのに中側は二階。
そして少しボロボロになった大きな建物がある。
「あの中にあなた達の仕事を説明する者がいます。中で全てを聞いて勇者様がフェルタイをなされる日をお待ちください」
そう言われた荒川さくら高校1年6組は建物に入っていく。
建物の中では信じられない事を告げられた。
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