異世界ディストピア。

さんまぐ

神隠し=異世界召喚。

第1話 神隠し事件。

春、新学期。

テレビの向こう、ネットの向こう、写真で見るような桜満開で芽吹く春。

青々とした草に菜の花の黄色、桜のピンク色に空の青さ。



だが、そんなものはどこにあるのだろうか?

曇天の空模様。

春休み中は晴れた日もあったが今はどうだろう?


新学期4日目のクラスは変なよそよそしさと他人行儀な空気感に支配されていた。

[東の京高校(ひがしのみやこ高校)2年3組]

板橋 京子は数人しか知り合いの居ないクラスで話し相手もなく休み時間にぼうっとスマートフォン…スマホを見る。


スマホの画面を埋め尽くすニュース記事はここ3日、連続して起きている神隠し事件に関してだ。


スマホには無責任でセンセーショナルな見出しがこれでも出ていて「UFOが連れ去った!?消えた26人は!?」「連続神隠しか!?消えた東部学園1年5組の生徒達は今!?」「荒川さくら高校1年6組の謎」そんなモノばかりだ。


テレビでは子供の頃に見ていた心霊番組の霊能者達が霊の仕業を説いていたり、UFOの仕業を訴える教授と口論を繰り広げていて、ネットの動画配信者達もこぞって国家ぐるみの陰謀論や、怪しい外国組織の誘拐、霊やUFOの仕業を語っていて動画サイトをひらけば「おススメ」「皆観てる」と出てくる程だった。


板橋 京子は暇な休み時間を誤魔化す為にこの手のニュースや考察記事を見て時間を過ごしていた。


他のクラスメイト達はそれぞれの知り合い達と和気藹々と話し、中にはジャージの貸し借りや教科書の貸し借り、宿題を写しにくる者も見える。


板橋 京子には友達がいない訳ではない。

ただ、この東の京高校は、板橋 京子が住む家からはそもそも交通の便が悪くて同じ中学から通う者が居らずに1人で通う事になった。

一年の時の友達は皆遠く6組や7組に行ってしまい10分の休み時間に会うのも憚れる。


板橋 京子が東の京を選んだのは単純に学力だった。

家から徒歩圏内の高校は中3の6月時点の模試で受験勉強をろくにせずともA判定が出てしまっていたし、交通の便で言えば上り線四駅先の高校は努力しても10月時点の模試でB判定しか出なかった。

代わりにこの東の京は努力の結果A判定になった自身の成績にピッタリの高校で、唯一の問題点は下り一駅で乗り換えて乗り換え駅から上り二駅で通う場所にある事だった。

他の生徒達は東の京に近いので自転車で通学する子も居れば徒歩やバスの子もいる。


とにかく板橋 京子が徒歩や自転車で東の京に通うには大回りで橋を越えたり車通りの多い道路を越える事になり電車の何倍も時間がかかる。

その為に地元から東の京を目指す生徒は居なかった。

結果、周りから「人生やり直すの?」と聞かれ茶化されるほどに一人ぼっちの進学になった。


一年経っても「学校選び間違えたかも」そう思ってしまう板橋 京子はまとめサイトの中で気になる記述を見つけた。


[なあ、神隠し事件でとんでもない事に気づいたんだけど]

[何?言ってみなよ]

[聞きたい]

[何?宇宙人でも霊でもなく地底人とか言うの?www]


[地図で神隠し被害の高校見てみろって、繋がってね?しかもこれ、全部地上3階にあるクラスで直線繋ぎすると当たるんだよ]


だがここで予冷と共に教科担任の坂登 大介が入ってきてしまい読む事をやめてしまった。

読んだからとどうにかなったかはわからないが確実に機会を逃した。


板橋 京子が読まなかった先にはこんな事が書かれていた。


[じゃあ次はどこだよ!?]

[東の京だ!]

[東の京の3階の生徒逃げて!]

[しかもこれ、発表されてないけどどれも11時らしいぞ]


これを見て板橋 京子は逃げたかはわからない。

眉唾だと鼻で笑ったかも知れない。


坂登 大介は太った身体をのしのしと揺らしながら教室に入る。



坂登 大介は去年家で倒れて緊急手術で心臓にペースメーカーを入れているので教室に入る時、「ケータイは止めてね〜。僕死んじゃうよ〜」と言うので、皆がいう事を聞いてスマホの電源を切る。


もしかしたらまとめサイトに気づいた友人や家族が連絡をよこしたかもしれない。

だが人命優先でスマホの電源を切ってしまう。


まだ春先で肌寒いのに半袖で汗をかく坂登 大介は汗を拭いながら「今度夏休みに痩せる為の入院だって、嫌になるよね〜。僕は学生時代に相撲部だったんだけど膝と腰を壊してさ」とお決まりの挨拶を言う。


そして11時…。

教室に異変が起きた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る