第20話 次の街へ
「まずは風呂に入んな!着替えは置いといたから!」
「おっしゃ!俺も一緒に入ってええか!?」
「殺されてぇかてめぇ!」
リゲル支部に戻って早々、ディキに風呂に入るよう言われた茜に悪ノリする忍。言葉はあれだが元気よく返事をしている茜を見て、アドニス復興隊の面々は一先ず胸を撫でおろした。
「冗談やって、さっさと行ってきぃや」
「はぁ・・ま、行くけどさ・・」
忍のノリに今後自分は付いて行けるのか、隠しきれない不安で猫背になりながら茜は広間を抜けて行った。
「ねぇ忍?」
茜がいなくなって直ぐ、近藤義雄と斎藤詩織が忍の元に歩み寄る。不安げに茜のいた方を向き、彼の明るい顔を覗き込む。
「あの子、大丈夫なの?」
「隠す異能・・油や火も隠せるんなら、かなり危ないと思うけど」
「そっか?んなこと無いと思うで」
他の者の不安を知った上で、彼はあっさりと言ってのける。
「だって、俺らって隠します言うて隠さんやん?黙って隠すのが普通やのに、茜は自分から隠す言うてるし。隠したもん出せるし・・そう、結局出すやん」
「それは・・そう、かもね・・」
「せやろ?詩織さんたちが不安になるのも分かるけど、俺は茜と上手くやってけそうな感じしかせんで」
「でも・・」
水を差すようで悪い自覚があるのか、近藤義雄はバツが悪そうに表情を曇らせていた。
「あの異能だと、普通に剣とか持って戦わないとだから。訓練が大変そうだね」
風呂から上がった茜は用意された服を着て広間に戻った。白シャツにショートパンツ、茶色い膝丈ブーツに黒いケープを着た彼女はディキに呼ばれた。
「それじゃあ茜ちゃん、今後の話をしようか」
彼女に促されて椅子に座り、半袖のシャツにTシャツ、ごわっとしたズボンにブーツ姿の忍も隣に座った。
「改めて私はディキ、前まであった冒険者ギルドの人間さ。今ではアドニス復興隊に変わったけど、私みたいに転生した異能者に敵意を持たない人もいるからね」
細かい傷や染みが目立つ木の長机に、ディキは丸められた羊皮紙を広げる。
「2人にやってもらいたいのは、各地にあるアドニス復興隊の支部に行って、向こうで悪さをしている異能者の情報を聞くこと。全部の街に支部があるわけじゃないから、その時は自分で情報収集。後は、2人の使命を全うしてもらえばオッケーよ」
言い終えてディキは2人の様子をちらっと覗く。何か考え込んでいるのか、腕を組んで難しそうな顔をしている忍。不満があるのか口を尖らせている茜。
口角を若干上げ、ディキは地図に書かれた街を指差した。
「とりあえず、隣のカペラに行ってもらうよ。朝一で出れば夕方頃には着くと思うから」
「おっしゃ、分かったわ」
「・・はーい」
異能者を倒さなければ、呪いによって死ぬ2人に選択の余地など無かった。
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