栞はちょっと首を傾げる。


「ええと……彼女って、お兄ちゃんの彼女という事ですか? 別に深い意味はないんですけど、兄に対等な女の人なんて一生できないと思っていましたから……」


「おい、それ、俺に対して失礼じゃね? まぁ、葵は、クラスメイトも本当だし、友達だっていうのも本当だ。彼女というのは、当たらずも遠からず、だな」


 俺は冷たい水を飲みながら、栞に話す。


「なるほど、つまりは彼女(仮)というわけだね。本当の彼女じゃないんだ。よかったぁ。もし、葵さんみたいな綺麗な人が本当の彼女だったら、お兄ちゃんにはもったいないもん」


「どういう意味だ」


「あはは……。綺麗な人ですか……。あまり自信ないのですが、照れますね……」


 葵は、照れた様子を見せながら笑う。


「それで、あの二人はどうしているんだ?」


 俺は、ここにいない二人の事を聞いてみる。


「玲奈の方は、いつも話をしたりしていますが、犬伏さんの方は、ここ数日、まともに話していませんね。ちょっと、近づきづらいといいますか。放課後も部室に顔を出しませんし、何を考えているのか分かりません」


「そうか……。ま、いつも通りでよかったよ」


 それを聞いた俺はホッとする。おそらく、犬伏は何か調べものでもしているのだろう。


「あ、それからですね。これ、なんですが……」


 と、持ってきた紙袋を俺に手渡しした。


 それを受け取った俺は紙袋の中身を確認する。中身は、ファイルに閉じ、ノートをコピーした、ここ一週間の授業内容と、毎回何か配られるお知らせが書かれたプリントが入っていた。


「ありがとう。色々と助かるよ」


「うわぁ、字、きれい……。ノート見やすいし、葵さんって、頭いいんですか?」


「え? ああ、そうですね。頭がいいのかは分かりませんが、それなりに勉強はできますよ」


「へぇ~! お兄ちゃん!」


 と、いきなり、俺の手を両手で握る栞。


「な、なんだ?」


「お兄ちゃん、葵さんの事、一生大事にするんだよ!」


 こいつ、一体、何を考えているのか、分からん……。何を勘違いしているんだ。


「あのなぁ、何を考えているのか知らないが、お前、何か勘違いしていないか?」


 俺は栞に言う。


「何が? はぁ……、これだからごみぃちゃんは……。ほんと、何も分かってない……」


「?」

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