Ⅳ
栞はちょっと首を傾げる。
「ええと……彼女って、お兄ちゃんの彼女という事ですか? 別に深い意味はないんですけど、兄に対等な女の人なんて一生できないと思っていましたから……」
「おい、それ、俺に対して失礼じゃね? まぁ、葵は、クラスメイトも本当だし、友達だっていうのも本当だ。彼女というのは、当たらずも遠からず、だな」
俺は冷たい水を飲みながら、栞に話す。
「なるほど、つまりは彼女(仮)というわけだね。本当の彼女じゃないんだ。よかったぁ。もし、葵さんみたいな綺麗な人が本当の彼女だったら、お兄ちゃんにはもったいないもん」
「どういう意味だ」
「あはは……。綺麗な人ですか……。あまり自信ないのですが、照れますね……」
葵は、照れた様子を見せながら笑う。
「それで、あの二人はどうしているんだ?」
俺は、ここにいない二人の事を聞いてみる。
「玲奈の方は、いつも話をしたりしていますが、犬伏さんの方は、ここ数日、まともに話していませんね。ちょっと、近づきづらいといいますか。放課後も部室に顔を出しませんし、何を考えているのか分かりません」
「そうか……。ま、いつも通りでよかったよ」
それを聞いた俺はホッとする。おそらく、犬伏は何か調べものでもしているのだろう。
「あ、それからですね。これ、なんですが……」
と、持ってきた紙袋を俺に手渡しした。
それを受け取った俺は紙袋の中身を確認する。中身は、ファイルに閉じ、ノートをコピーした、ここ一週間の授業内容と、毎回何か配られるお知らせが書かれたプリントが入っていた。
「ありがとう。色々と助かるよ」
「うわぁ、字、きれい……。ノート見やすいし、葵さんって、頭いいんですか?」
「え? ああ、そうですね。頭がいいのかは分かりませんが、それなりに勉強はできますよ」
「へぇ~! お兄ちゃん!」
と、いきなり、俺の手を両手で握る栞。
「な、なんだ?」
「お兄ちゃん、葵さんの事、一生大事にするんだよ!」
こいつ、一体、何を考えているのか、分からん……。何を勘違いしているんだ。
「あのなぁ、何を考えているのか知らないが、お前、何か勘違いしていないか?」
俺は栞に言う。
「何が? はぁ……、これだからごみぃちゃんは……。ほんと、何も分かってない……」
「?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます