XVI

 栞の性格上、怪しいと思ったら、さり気なく調べるのが彼女である。


 朝食を食べ終わったら、さっさと家を出るしかないな。もうちょっとゆっくりして出たかったが、仕方がないよな。


 トイレを済ませた後、手を洗い、リビングに顔を出す。今日の朝食は、休日であり、トースターで焼いた食パンの上にベーコンと目玉焼き、それとインスタントのコーンスープ。後、飲み物にコーヒー牛乳がテーブルの上に置いてあった。


「お兄ちゃん、朝食出来たから、もう食べてもいいよ」


 自分の席に座り、先に食べ始めている栞。それを見た俺は、向かい側の席に座って、スープを飲んだ後、食べ始める。


「あ、お兄ちゃん。食べ終わったら、食器、流し台に置いといてね。私、部屋で勉強してくるから。よろしく~」


「ああ、分かった……」


 やはり、俺の思い過ごしなのだろうか。さっきまでの栞とは、まるで別人だ。


 栞は、さっさと食べ終わると、自分の部屋へと行ってしまった。


 一人、リビングに取り残された俺は、ゆっくりと、熱々の食パンを噛みしめながら、コーヒー牛乳を一気に飲み干した。


 自分の部屋に戻ると、タンスからそれなりに良さそうな服を探すが、デートに来ていく服を何にすればいいのか、決まらない。今まで外に出るとしても、栞の付き合いばかりで、そのほとんどが適当に選んだ服を着ていた。


「あー、そう言えば、俺の服って、全部親か、栞に任せっきりだったな。自分で選んだことないや。うーん、栞に訊くのは、気が引くし、どうすれば……」


 しばらく、タンスの中に畳んである服と睨めっこし、そして、ため息を漏らした後、俺はある決心をした。


 自分の部屋を出て、隣の部屋に移動する。扉をノックすると、栞が部屋から顔を出した。


「はい、はーい。どうしたの? お兄ちゃん?」


「勉強中すまないな。ちょっと、お前に訊きたいことがあってさぁ」


「私に訊きたいこと? まぁ、いいけど……。で、何の用?」


「それなんだが……。お前のセンスに任せて、俺の服選びをしてほしいんだが……」


 妹にこんな頼みごとをするなんて、恥ずかしくて目が合わせられない。


「なんだ、そんな事だったの? 別に構わないよ。お兄ちゃんのセンスだと、壊滅的だからね」


 そこまではないだろ。一般的なセンスと言ってほしい。だが、ここはグッとこらえる。


 俺と栞は、俺の部屋に移動して、栞にタンスの中から良さそうな服装を選んでもらう。


「今日の天気とか、季節を考えると、爽やかな感じがいいと思うんだよね。まだ、暑くもないし、涼しい格好を考えると、これとこれかな?」

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