Ⅻ
グラウンドには、運動部の生徒たちが泥まみれになりながら練習に励んでいる。
私が外の景色を眺めていると、ようやく二人が姿を現した。
「すみません。ちょっと、私の方が先生に用事がありまして遅れました」
と、謝りながら部屋に入ってくる葵。
「俺は葵に付き添っていたから終わるのを待ってきたんだ。待たせて悪かったな」
坂田君は、彼女の付き添いらしく。やはり、この二人はお似合いだ。まだ、付き合って間もないのに長年連れ添った幼馴染、いや、夫婦のようだ。
二人は、その後、何やら言い合いをしており、それが終わるのを私は待った。
「ふっ……」
つい、笑ってしまい、声が漏れてしまう。
「玲奈、どうかされましたか?」
葵が、笑っている私を見て、困惑した様子で言った。
「あ、いや、なんでもないわ。ちょっとね……。思い出し笑いよ、思い出し笑い」
私は誤魔化しながら、お腹を押さえていた。左目から少し涙が出そうになったが、すぐに左手で拭きとる。本当にこれは思い出し笑いなのかもしれない。
「ん? お前ら、いつの間に、そんなに仲良くなったんだ? 名前を呼び捨てするほどに……」
私と葵は、互いに見つめ合い、同時に笑った。
「あら、知らなかったの? 私達は親友よ、親友。男女の中よりも女子同士の仲って、結構、深い関係なのよ」
私は葵に抱きついて、坂田君に見せつけてやった。
「玲奈、ちょっとやめてください。恥ずかしいではないですか」
葵は嫌がるようで、恥ずかしがる。そんな彼女を見ると、ちょっとだけ好意を持ってしまう。
「んー、これはこれで……。はっ! いかん、いかん! 何を考えているんだ、俺は‼」
坂田君は、私達を見て、何を考えているのだろうか。女子同士の友情? まさか⁉ いやいや、それはないでしょ。そんなの考えすぎじゃない。
「ま、冗談はさて置き、デートの計画を立てるわよ!」
そう、私は私。今、この時代に生きる富山玲奈よ。この時代にできることを存分に生かすだけ、私はこの天使化の暴走を止めるための計画を遂行するためにこの時代を選んだのだから。
私が進行を進め、デートの計画が決まるのに数日かかるのは当然の事だった。
× × ×
その日の放課後——
僕は、学校が終わり次第、すぐに自宅に帰宅した。
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