Ⅲ
「俺はそうだと思っている。確かに天使化の暴走は、本当にやばいのかもしれないが、天使の意志で破壊するような感じではない気がするんだよな。葵の中にいる天使は、逆に葵を救いたいみたいな言い方をしていたぞ」
「なるほど、そうですか……。天使が、意思を持って世界を破壊しないと……。僕が知っている情報とは、違いますね。暴走することは知っていますよね。でも、天使が意思を持っていることは、初耳です。だとすると……いや、これは秘密にしておいた方がいいのかもしれないですね……。天使が意思を持って、宿主を支えるとか、聞いたことありませんから……」
途中からぶつぶつと、独り言を言い続ける犬伏は、考え込んだ。
「分かりました。では、辻中さん。その天使を呼び出すことは、可能でしょうか? 出来れば、話をしてみたいと思っているのですが……」
犬伏は急なお願いをしてみる。さすがにこれは難しいだろうと思った俺は、葵の方を見た。
葵は目を閉じて、周囲は静まり返る。おそらく、自分の中にいる天使に話しかけているのだろう。いつでも天使が出てくるとは限らない。天使の方だって、警戒はしているはずだ。
葵はしばらくして、目を開け、犬伏の方を見た。
「大丈夫だと言っていました」
「そうですか。ありがとうございます。では、さっそく……」
「ですが、条件が一つあると言っておりました」
「条件ですか? なんでしょうか? できる限りの事は、僕たちも協力しますが……」
犬伏は、葵に条件があると言われると、困った顔一つもしない。天使の方が条件を出すという事は、一体、何なのだろうか。
「この事は他言無用でお願いしますと言っていました。もし、他人に話すことがあるとなれば、その時、命がないと思ってくださいと……」
おいおい、物騒だな……。それって殺すってことかよ……。俺も殺されたりするのか?
「葵、それって、天使は怒っていたりするのか?」
「いえ、別に怒ってはいませんでしたけど……。ただ、天使の情報を漏らして、私が何か危ない目にあったら容赦はしないみたいな感じでしたけど……」
それって、少し怒っているんじゃないのか?
「分かりました。その約束は守りましょう。僕たちも天使に暴走されたり、殺されたり、世界が作り変えられるのは避けたいですからね」
全員がお昼を食べ終わり、葵は、再び目を閉じると、雰囲気が変わった。
どうやら葵の中に眠る天使がお目覚めのようだ。
この葵の中に眠る天使と会うのは、二回目だ。さすがに二回目になるとびっくりはしなくなるが、それでもまだ、これはこれでなれない。緊張が走る。
「おや? どうやら人が増えているわね。あなたもそんなに緊張せず、楽にしていいわよ」
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