こうしてみると、なんとなくではあるが、葵と富山の雰囲気が所々にているような錯覚が、また、感じた。


「さて、とりあえず、ご飯を食べながら話をするとしましょうか」


 犬伏が座ったまま、自分の目の前に昼食用の弁当を置いて、俺たちに話しかけた。


 俺達は小さく頷き、富山は犬伏の隣に、俺と葵はその向かい側の席に座って、それぞれ持ってきた弁当を開け、食べ始める。


「それでは改めて、自己紹介をしておきましょう。僕は、犬伏祐一。辻中さんとは、同じクラスの生徒です。よろしくお願いします」


「私は、富山玲奈よ。辻中さんと同じクラスよ。よろしくね」


 二人が挨拶を終えた後、俺の番が回ってくる。箸を置き、ペットボトルの水を少し飲む。


 ゆっくりと呼吸をし、いつでも話せるように調整する。


「俺は坂田陣平。二人と同じく、同じクラスだ。よろしく」


 そして、最後に葵がゆっくりと立ち上がって、俺達三人をそれぞれ見つめた後、口を開く。


「私は、辻中葵です。皆さんと同じクラスです。よろしくお願いします」


 小さく会釈をすると、そのまま席に座りなおした。


「それでは、自己紹介も終わったことですし、続けて本題に入るとしましょう。食べながら僕の話を聞いていてください」


 犬伏はいつの間にか、お昼を食べて終えていた。あの短時間でいつの間に……。


「さて、辻中さんには詳しく天使の事について、お話をしていないので、まずは、そこから話をしましょう。天使は、元々、あなたの中には存在しないものでした。では、なぜ、天使は、あなたの中に存在したのでしょうか? それは、数年前に突如、宇宙から降ってきた隕石が、地球に落ち、その隕石こそが、天使の魔力が入っていたのです。天使の個体数は、私にもまだ把握できていないですが、あなただけではないという事です。そして、次に、天使を宿した者は、天使化となり暴走するのでしょうか? 答えは簡単です。天使の魔力を制御できなくなるからです。暴走するとどうなるか。それはあなた自身、自我を失い。最終的には、この世界を破壊してしまうでしょう」


「でも、私の中にいる天使は、時々、私に話しかけてくるのですが、これはどういう事でしょうか? 先程の話ですと、天使は、私自信を飲み込んでしまう、そのようなことをおっしゃっていますが、それだったら天使は、私に助言などしないと思うんですが……」


「俺も同じ意見だな。確かに葵の中にいる天使とこの前、話をしたから、そいつが葵を気付つけるような事をするように見えなかったんだが……」


 確かに犬伏の話は、筋が通った話なのだろう。未来人だから……。だとして、それなら、なぜ、あの時、俺は天使と話をしたのか、不思議でたまらない。おかしな話だ。


「なるほど。二人はこう言いたいのでしょうか? 天使は自分の意志では、暴走しない」

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