Ⅶ
どうしたら辻中と距離を詰められるのか、それを考えるたびに頭が痛くなる。
六時限目が始まってから十分過ぎた頃、ようやく担任が教室へと入ってきた。
「では、これから一年間、務めてもらう委員会決めをします。とりあえず、学級委員長から決めるから立候補する人は手を挙げてください」
担任の萩村京香は、学級委員長に立候補するものがいないか、クラス全体を見渡す。
萩村京香、俺たち、二年二組の担任教師であり、担当教科は国語である。
萩村先生が呼びかけても、誰も学級委員長になろうとは思っていない。率先して、なる人間など果たしているのだろうか。
俺は辺りを見渡すと、ようやく、恐る恐ると、手を上げる生徒がいた。サッカー部の人間だ。
まぁ、サッカー部ならノリのいい奴がやるだろうし、見た感じ、俺よりもイケメンな男子生徒だ。これなら、最初からビシッと手を挙げろよな。
学級委員長が決まり、女子の副委員長、書記が決まっていく。それさえ決まってしまえば、萩村先生は、学級委員長に残りの委員決めをすべて任せ、新たにこのクラスの委員長になった男子生徒が、仕切り始める。
「それでは、残りの委員を決めますが、まずは体育委員から決めていきます。立候補する人はいますか?」
そう言うと、男子生徒が結構、手を上げ始める。
やはり、男子たるものどの時代になっても体育という言葉は、好きなのであろう。
委員会決めが次々と決まって来るうちに、ようやく図書委員が回ってくる。
「それでは次、図書委員がやりたい人」
俺は、辻中の腕の動きを確認しながら同時に手を上げる。
どうやら、犬伏の確率は間違っていなかったらしい。辻中は、左手を挙げていた。
「ええ、ここは定員二名ですので、この二人で決まりという事で、名前の方をよろしくお願いします」
「えー、坂田陣平です」
「辻中葵です」
俺たち二人は名前を言って、それを書記である男子生徒が、黒板に名字だけを出席名簿を見ながら記入する。
ちなみに犬伏は、保健委員。富山は、体育委員である。富山はともかく、犬伏が保健委員で大丈夫なのだろうか。
それからは委員決めが終わり、それぞれ同じ委員になった生徒同士で集まって、各委員の書類に目を通し、それぞれの名前を書く。
俺は、辻中の席まで歩み寄って、近くの生徒の席を借りて座った。
「坂田陣平。朝、会ったけど覚えてる?」
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