Ⅵ
そう言って、犬伏はスマホを取り出すと、どこかに連絡を取り出す。
「あーもしもし、僕です。はい、はい、そうです。至急、データを送っていただきたいのですが、よろしいでしょうか? そうですね、はい。もうしわけありません。それではよろしくお願いします。はい、失礼します」
そうして、会話を終えると、スマホの画面をしばらく眺めながら、指で何やらどこかにアクセスしているようだった。
「それで、その最終手段とやらは、できそうなんだろうな?」
「ええ、大丈夫ですよ。僕の信頼を寄せている人にデータを送ってもらう事になりましたので、これで作戦に乗り出せる武器は揃うでしょう」
スマホの電源を切り、ポケットの中に戻す。
「最初に言っておきます。この手を使うと、未来を変えてしまう恐れもあるのです。これだけはできるだけ使いたくはありません。未来というのは、真実ではありません。空白です。その空白にどの分岐点を選択するかによっては、変わってきます。坂田さん、あなたの未来もまた、空白でできています。誰と出会い、誰と共にするのか。それはあなたでも分からないことでしょう。でも、それが未来へとつながる。僕たちは、その未来にちょっと付け足すような調味料でしかないのです」
犬伏の言っていることは三分の一も理解できなかった。
「さて、本題に戻しましょう。知り合いから送られてきたデータによると、可能性的には図書委員だと思いますよ」
「その確信が持てる理由はあるのか?」
「はい。ちょっとした未来余地がありましてね。図書委員になる確率が八五パーセント。図書委員は男女の定員は一人ずつまで。それに男女でやりたい人は、まず、いないでしょう。理由は、昼休みや放課後の時間が無くなりますし、高校生の彼らにとっては、読書など、あまりしませんしね。一方、彼女の性格からしては、それとは真逆なので、これで決まりかと……」
「なるほど……。でも、残りの十五パーセントの可能性はどうなっているんだ?」
「定員のところに希望者が、重なった時ですね。でも、その可能性は低いので大丈夫だとは思いますよ」
丁度、掃除の終わりのチャイムが鳴り、箒や雑巾を片づける。
生徒たちは、急いで教室に戻り、午後から始まる授業の準備を始める。
五時限目が終われば、いよいよ、委員会決めがある六時限目へと突入する。
俺は、それまでの時間、ずっと考え事ばかりしていて、五限目の国語の授業は、全く頭に入ってこなかった。
近くの席で真剣に授業を受けている辻中とは違い、国語の授業は、眠くなる一方だ。退屈でしかない。小説や漫画を読むのは別だけどな。
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