Ⅴ
「ねぇ、辻中さん。ちょっといいかな? 私、富山玲奈っていうの。よろしくね。」
「はい、大丈夫ですけど……。何か用ですか?」
辻中は、冷静に話しかけてきた富山に対して、きちんとそれなりの対応をする。
「うーん。次の授業の事なんだけど、何の委員会に入るか、辻中さんは決めているの? ほら、いろんな委員会があるけど、私、どれにしようか迷っていてね。辻中さんだったらどうするのかなぁ? と、思って訊いてみたんだ」
演技がうまい。あの作り笑いと彼女に向ける接し方。将来、女優としてやっていけるのではないだろうか。
俺は、富山と辻中の話を聞きながら、部室から帰る途中に売店で買ったペットボトルのジュースをちょっとずつ飲んだ。
「そうですね。私は、自分に合った委員会に入ろうと思っています。それこそ、例えば、図書委員もいいと思っていますし、保健委員、文化委員もいいですね。私にとってはどれも自分に合ったものだと思っていますし、どれにするか、まだ決めておりません。でも、そうですね……。この三つのどれかには決めようと思ってはいますよ」
「あ、うん……。それでその三つの中で第一希望とかあったりする?」
「ないですね。どれもやってみたいと言えば嘘ではないですし、その場の流れでもいいかと思っています。富山さんの方は、何かやりたい委員会とかあるんですか?」
「私? 私ねぇ……うーん……」
逆に辻中に質問を受けた富山は、少し悩みながらも頭をフル回転させて、言葉にする。
「私は体育委員もいいかなぁ? 私、運動は得意だし」
そりゃあ、魔法も使えれば運動も得意だろうよ。
「なるほど。富山さんは運動が得意なんですね。すごいですね。私なんて、運動など、普通みたいなものですよ」
それからは富山と辻中は、別の関係のない話をしながら昼休みを過ごした。
彼女らを見ていると、これが女子同士の普通な関係、タイプも違うのにどこかしら、同じ雰囲気を感じる。
気のせいか。気のせいだよな……。
俺はチャイムが鳴ると同時に、立ち上がって荷物を廊下にある棚の上に置くと自分のクラスを後にした。
「それで結局のところ、犬伏はどう思う? どれか一つに絞れそうか?」
俺は、とある教室で箒を持ちながら、隣で共に床を掃除をしている犬伏に訊いてみた。
「そうですね。僕の考えでは、二つまでには絞ることはできそうなのですが、あの話では何とも言えませんね。本当は最終手段とかは、あまり使いたくもないのですが、仕方ありませんね」
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