「どうですか? 彼女の攻略の意図、何とかつかめそうでしょうか?」


 と、いきなり後ろから犬伏が話しかけてきた。


「そーだな。さっぱり分からん。あいつが何を考えているのかも想像できない。徹夜して、ゲームはしたが、理想と現実は、違うもんだな。三次元の女は、俺たちが想像する二次元の女みたいには、うまくいかない。さて、どうしたものかね」


 俺は小さく欠伸をすると、観察していた辻中から目を逸らした。


「そうですか。では、一つだけ、アドバイスを。女性の心を掴むには、優しさが大切ですよ。後、辻中さんの事ですが、彼女は、そこらの女性よりかは、攻略が難しいので、本気で行ってくださいね。まぁ、あなたの徹夜で培った女性攻略は、きっと役に立つでしょう」


 犬伏は、そう言い残して自分の席に戻って行った。


 あれはお前がやれと言ったからやっただけであって、別に無理やりやらされたからな。


 でも、徹夜であれを攻略していなかったら、ちょっとやばかったかもな。女子とも、まともに話などしたことなかったし……。朝のあれは、会話になっていたのか? まぁ、名前を憶えてもらっただけでも大丈夫だろう。後は、俺の運に任せるよ。運に。


 そして、朝のホームルームが始まり、授業がどんどん進んでいった。




「はぁ~」


 俺は昼休み、昨日犬伏たちに呼び出された文芸部の部室で深々とため息をついた。


 理由は、想像するように辻中とのコンタクトが中々取れないことである。


「そうですね。ここまで接点がないと、難しいですね。困ったものです。何か手があればいいのですが、ちょっと、僕も考えが甘かったようです。んー、どうしたものやら……」


 俺も犬伏もお手上げ状態だった。だが、一人だけ、あきらめずに考えている少女がいた。


「そうね。だったら、午後の授業に掛けるしか……。犬伏君、確か、午後の授業はあれでしたよね?」


「あれとは? ……ああ、そうですね。あれがありました。そういう事ですか。なるほど……。僕も富山さんに言われるまで気が付きませんでした。ありがとうございます。それで行きましょう」


 犬伏は富山に言われて、意外と絶賛していた。何に気づいたのだろうか、ちょっと気になる。


「おいおい、二人で分かったような話をするなよ。俺にも分かりやすく説明しろ。俺が分からないと意味がないだろう?」


「まぁ、まぁ、落ち着いてください。今、ちゃんと説明しますから……。それでは説明しますね。いいですか、午後の授業には、委員決めがあります。これは、いいチャンスかもしれないです。僕らが情報を手に入れるには、少し時間がかかりますが、あなたと辻中さんが同じ委員会なれば、どうなると思います?」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る