Ⅶ
「でも、未来に魔法の文化が出来ていたらどうします。この先の未来は、例え、僕にも、あなたにも分かるはずがありません。未来の科学は未知数という事です。そして、これはあなたには話しておかなければならないことなのです」
犬伏が何を言っているのか、全く理解できないでいた。
「それで、魔法が何と言いたいんだ? 俺にもその可能性とかあるんじゃなかろうな?」
俺は腕を組み、冗談だろ、という態度をとる。
「いいえ。あなたには魔法の適性はありません。魔法の特性は、ね……」
なんだか、その言い方だと、俺以外には魔法の適性がある奴がいるみたいな言い方じゃないか。信じられないけど。
だが、そんな根も葉もない言葉巧みな話術で、俺が乗せられるわけがない。
「そんなの信じられるわけがないだろ? なら証拠を見せてみろ、証拠を。この世に神がいるとするならば、神を目の前に出してみろ。それと同じ論理だ」
「はぁ、あの人と同じ性格ですね……」
富山がようやく口を開く。
「何か言ったか? よく聞こえなかったんだが……」
「いいえ、何でもありません。こちらの話です。こちらの……」
「富山さん、それではお願いします。この人が納得できるようなやり方でいいです。手のひらに炎を出すくらいでいいですよ」
「分かってますよ。では……」
そう言って、富山は立ち上がり、右手を前に出して、目をつぶって、念を込める。
すると、そこにはなかったはずの炎が富山の手のひらに出現した。
びっくりした俺は、唖然としていた。いや、人間にこんな不思議な芸当ができるはずがない。どこかにトリックがあるはずに違いない。でも、目の前でこんな事をされれば少し、信じるしかないと思う自分もいた。
富山は炎を消し、再び席に座る。隣でニコニコとしていた犬伏が、話を続ける。
「これで分かったと思います。一応、僕にも魔法の適性はあります。そして、僕たち二人は、この時代の人間ではありません。簡単に言えば、『未来人』と言った方があなたにとって、理解しやすいでしょう」
未来人、そう言う犬伏を見て、俺は素直に納得するしかなかった。
「未来人ね。だったら、俺の未来もあんたたち、二人は知っているという事か……。だったら、未来の俺は、どうなっているんだ? 何をしている?」
気になって、自分の未来を聞いてみる。だって、未来人ならそれくらい知っての事だろう。
だが、犬伏は、少し困った表情をして、ためらっていた。
「そうですね。その話になると、それは少々、言いにくいのですが、これは我々にとっては、禁足事項なのです」
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