Ⅵ
俺は返事をし、この後どうすればいいのか考える。
「まあ、まずは椅子に座ったらどうですか? あなたと少しお話をしたいと思いましたので、少々、手の込んだやり方をしてみました」
手紙の差出人は男子生徒の方だったらしい。嬉しいような、悲しいような、複雑な気持ちだ。
俺は向かい側に置いてある席に座り、カバンを隣の席に置く。そして、ポケットから白い封筒を取り出して言ってやった。
「これはお前が出したという事か? 俺をここに呼び出したのは何か理由でもあるのか? それに確か、二人は俺と同じクラスだよな。なら、教室とかでも話せばいいんじゃないのか? ま、別に深刻な話ならそれはそれで仕方はないが……」
さて、この二人がどんな話をするのかは気になるが、状況的には恋の相談とか、勉強の相談だろう。なら、それなら、わざわざこんなところまで呼び出さなくてもいい気がする。
「そうですね。僕はあなたと同じクラスの犬伏祐一です」
「わ、私は、富山玲奈と言います」
二人はそれぞれ自己紹介をしてくれた。二人の名前は初めて聞き、去年は、なにも接点のなかったクラスメイトなのだろう。
犬伏は、見た目は普通の男子高校生で、顔立ちは悪くないし、身長もそこそこはある。これでサッカー部だったら、今頃、学校の人気者と言ってもいいだろう。
富山の方は、髪は肩よりちょっと伸ばした感じで、優等生という感じでもなく、ちょっとお転婆っぽいという感じである。
二人はどうして、何もない俺に話を持ち掛けたのかはこれから話をしてくれるらしいが、んー、どうも何が目的なのかが、見当がつかない。新学期初日から不味い事はしていないはずなだが……。
「さて、本題に入る前にあなたはどうしてここに呼ばれたのか分かりますか?」
犬伏は、優しく俺に対して、質問を投げかけてきた。
「さぁ、さっぱりだな。俺は二人に対して何もしていないし、何かするつもりもない。それにこれ以上考えても時間の無駄だしな。降参だ。教えてくれ」
「そうですか。では説明をしましょう。坂田さんは、このように不思議な現象があると思いますか? 例えば、魔法、魔術、錬金術など、ファンタジーな話です」
「それは……まぁ、あったらいいよな。生活は便利になるし、楽できるだろ? でも、それは妄想の世界でしかない。現実はそんなに甘くないけどな……」
俺は犬伏の質問にそう答えた。
別に魔法が欲しくないからだとからではなく、そもそもそんなのはあるはずがないと思っているからである。
すると、犬伏は、うんうん、と頷き、俺の答えに納得していたようだった。
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