Ⅲ
いや、それではスマホに失礼すぎるだろう。大体、連絡先が少ないからって、調べものとか、ゲーム、音楽を聴くくらいは役に立っている。
そう時間を潰しているうちに、時刻は七時半を回っていた。
もうそろそろ家を出ないといけない時間であり、漫画をベットの上に置いたまま、バックを左肩に掛けて、部屋を後にした。一階に降りると、丁度、制服に着替えて家を出ようとする栞と鉢合わせした。
「今、出るところか?」
「うん。片付けも終わったし、今から出たらギリギリかもね……」
栞は、俺の方をじーっと見てくる。これは俺に対して、途中まで送ってくれと目で訴えているのだろう。言わなくてもわかるだろ。と言いたそうにも見える。
「ま、学校に行く途中だし、送ってやるよ」
「おお! お兄ちゃん、気が利く! いやー、ごめんね。本当にありがとう」
と、靴を履きながら玄関の下駄箱の上に置いてある俺の自転車の鍵を握りしめ、先に外に出た。その後を追う俺も靴を履いて、外に出て、玄関の鍵をしっかりと閉める。最後にしっかりと戸締りをしているか再確認し、後ろを振り返ると、俺の自転車の後ろの方にまたがって、俺が来るのを待っている。
「レッツゴー!」
「はぁ……。面倒くせぇ……」
バックをかごの中に入れ、自転車にまたがると、栞が落ちないように俺の腰の位置を握りしめる。こういうのは、普通、兄妹ではしないものなのだが、この自転車登校も何度かしており、慣れている。ああ、これが綺麗な性格のいい美少女の彼女であれば、文句はない。
自転車を漕ぎ始め、俺の通う高校の通り道にある栞の通う中学校を目指す。
本当は二人乗りなんか、学校の知り合いに知られもしたら面倒だが、残念ながら友達もいない俺には、ノーダメージである。
いくつか信号を抜け、橋を渡ると、俺はブレーキを止める。
「ほら、着いたぞ。降りろよ」
「お兄ちゃん、ありがとう。おかげで思っていたより早く着いたよ」
栞は、自転車から飛び降りて、かごに入れておいた自分のカバンを持って、学校につながる堤防の方へと歩いていく。
「じゃあ、行ってくるね。今日は、四時頃に帰るから夕食は七時くらいかな?」
「おう、分かったからさっさと早く行け……」
そう言って、栞の後姿を見送ると、再び自転車を漕ぎ始めた。
ここから高校まではそう遠くはないが、ざっと十分くらいはかかるだろう。
そして、自分の通う高校までたどり着くと、俺は自転車から降りた。
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