Ⅱ
「いただきます」
「はい、どうぞ、召し上がれ」
二人して、手を合わせながら朝食を食べ始める。
大きな皿には、ウインナー、スクランブルエッグ、マッシュポテト、トマトがあり、ご飯、みそ汁、海苔が今日の朝食だ。別にこれだけ十分な豪華な朝食だと思っている。作ってくれた者に感謝しないのは恥であるからにして、ましてや年下の妹に作らせているとか、兄として、感謝以外の言葉がない。
中学三年生の栞は、俺よりもしっかりしている所はあるのだが、いつもどこか抜けている所もある。髪は肩の位置よりも少し上まで伸ばしており、寝間着はほとんどラフな格好で過ごしており、これが今どきの女子と言われても否定する気にはなれない。
そして俺、坂田陣平は今年から高校二年生になる。今日から新学期であり、クラスも変わるため、ウキウキはしているが、その裏では心配事が多い事もたくさんある。
例えば、クラスメイト達と親しげにできるだろうかとか、学業の方はそこまで心配はないが、まぁ、特に人とうまくやっていけるかが大きいのである。
「そういえば、今日からお前は三年生に加え、受験生になったんだが……志望校とか決めていたりするのか?」
俺は、つい、栞に訊いてしまった。
すると、栞はウインナーを食べながら俺の質問にさらっと答えた。
「ま、お兄ちゃんと同じ高校でいいかな? 別にやりたいことがあるわけではないし、それにあそこだったら、私の成績でも通るでしょ? たぶん、大丈夫だよ」
「あ、そう……」
本当に今のままだったら受かってしまいそうな勢いであって、逆に怖いしかない。
そんな話をしながら朝食を食べ終えると、食器を片づけ、水につける。
登校する時間まで後三十分以上もあるが、歯磨きとか、着替えをしているうちにそんな時間も過ぎてしまうだろう。
テレビの電源を切って、洗面所で歯を磨き、俺は再び自分の部屋に戻った。
部屋の中は、空気の入れ替えで窓を開けっぱなしにしていたせいか、肌寒くなっており、すぐに窓を閉め、昨日のうちに準備しておいた荷物の入ったバックをベットの上に置き、服を脱ぎ、制服に着替え始めた。
俺の通う高校は、学ランであり、ブレザー制服の高校とは違って、意外と昔のヤンキーが着る服っぽいイメージがあるが、これはこれで、意外とかっこいいとも言える。
制服を着替え終えた俺は、時間になるまで気晴らしに昨日買っておいた新刊の漫画でも読みながら、何度も時計をチラ見する。近くには誰からでも連絡が来るようにとスマホを置いているのだが、連絡先は、妹と両親しかないので、あまりスマホとしては万能とは言えない。
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