106.当然の戦い

「スライグさん、それにセレリアさん、お二人ともしばらくこの屋敷にいた方がいいかもしれませんね」

「マルギアスさん、別に僕達は……」

「いえ、彼女に狙われているなら、放っておく訳にはいきません。ここにいてもらえれば、それだけで護衛することができますから」

「……」


 マルギアスさんの言葉に、スライグさんはセレリアさんの方を見た。

 それは恐らく、彼女が巻き込まれることを危惧しているのだろう。

 もしかしたら、自分だけなら問題ないと思っているのかもしれない。しかし、それでも妹の安全だけはと考えているのだろう。


「……わかりました。それなら、ここにいさせてもらっても構いませんか?」

「ええ、それはもちろん」

「セレリアも、それで構わないか?」

「……ええ、構わないわ、兄さん」


 スライグさんは、この屋敷で保護してもらうことに決めたようだ。

 それなら、こちらとしても安心できる。これ以上、ルミーネの被害者は増やしたくはない。


「スライグさんが話を聞いたという人達にも、後追いにはなりますが警護を要請していきましょう……そして、何より彼女との決着をつけなければなりませんね」

「……マルギアスさん、それはつまり、ルミーネのいる島に乗り込むということですか?」

「……ええ、そのつもりです」


 私の質問に、マルギアスさんはゆっくりと頷いた。

 当然のことではあるが、騎士団はルミーネのいる島に行くつもりのようだ。彼女の被害者をこれ以上増やさないためには、それは必然である。


「私も、同行させてもらえますか?」

「……一般人であるあなたを本来なら連れて行きたくはありませんが」

「彼女に対抗できるのは、私だけだと思います」

「ええ、悔しい限りですが、その通りだと私も思っているのです」



 私は、騎士団の戦いに同行するつもりだった。

 マルギアスさんも薄々わかっていたようだが、ルミーネに対抗できるのは恐らく私だけだろう。

 そのため、私もハールース島に行く必要がある。彼女との決着をつけるには、私の存在が必要不可欠なのだ。


「騎士団を代表して、改めてお願いします。どうか、ルミーネの討伐にご協力ください」

「はい、もちろんです」


 マルギアスさんの言葉に、私はゆっくりと頷いた。

 当然、協力を惜しむつもりはない。そもそも彼女をなんとかしなければ、私自身も安全ではないのだから、個人としてもルミーネとの決着はつけなければならないことである。


「ルルメアさん……お気をつけて」

「スライグさん……ええ」


 そんな私に、スライグさんは声をかけてくれた。

 その表情は少し暗い。もしかしたら、また自分が直接戦えないことを気にしているのかもしれない。

 そんなことは気にしなくていいのだが、本人としては気になってしまうのだろう。私はその言葉だけで、とても嬉しかったのだが。

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