96.驚くべき訪問者達

「ルルメアさん、お久し振りですね」

「え、ええ……」


 スライグさんとセレリアさんが来てからしばらく日が経ってから、私の元に新たな来客があった。それは、この国の第三王子であるケルディス様だ。

 彼は一人で来た訳ではない。とある人物を連れてきたのだ。

 その人物に、私は驚いている。いや、ある程度は予想していたことではあったのだが、それでもその二人がこの場所にいるという事実に対して、私は驚かずにはいられないのだ。


「ルルメア、久しいな……」

「本当に久しぶり……元気そうで良かったわ」

「レイオスさん……エルーシャさん……」


 私の目の前にいるのは、かつての部下だったレイオスさんとエルーシャさんの二人である。

 二人は、私の直属の部下にあたる地位にあった。聖女をしていた時に、一番関わっていたのが、この二人なのだ。

 彼らとは、いつぶりだろうか。それ程時間は経っていないはずなのだが、なんだか彼らと過ごした日々がとても遠い昔のように感じられる。


「今回の件……ルミーネの件について聞きたくて、二人に来てもらいました。連れてきたのは、お二人があなたから話を聞きたいと言ったからです」

「……私から?」

「彼らが言っていることが本当かどうかは、わからないじゃない? だから、信用できるあなたと会って直接話したかったのよ」

「そう……だったんですね」


 エルーシャさんの言葉に、私は目をそらしてしまった。

 なぜなら、私は二人に対して負い目があるからだ。

 私は、自分の仕事を全て放り出して、逃げてきた。いうなれば、二人に全てを押し付けてしまったのだ。

 それが申し訳なかった。そのため、二人の目を直視できないのである。


「ルルメア、俺達に負い目など感じる必要はないぞ?」

「え?」

「お前の判断に対して、俺達は何も思っていない。仕方ないことだとそう思っていただけだ」


 そんな私に、レイオスさんはそう声をかけてくれた。

 仕方ないこと。二人は、私の行動に対して、そう思ってくれていたようだ。


「あなたは、あのグーゼス様の悪意に直接さらされていた訳だもの。あの時まで折れなかっただけでも、大したものだわ。あの場所から解放されて、私は改めてそう思ったの」

「思い返してみれば、後悔ばかりだ。俺達も、もっとお前のことを気にかけるべきだ。もし謝るというなら、それは俺達の方だ。すまなかった」

「ええ、ごめんなさい」

「そ、そんな……」


 レイオスさんとエルーシャさんは、私に対して頭を下げてきた。

 それは、おかしな話だ。謝るべきなのは、私の方であるというのに。

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